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形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(7) 文化服装学院 ファッション工芸科・文化史授業 ノート(3)

装飾文化史 表象文化史

 

ノート補足;連続文様の観念

 

ズールーの大地の観念(成長を通して物事は活発になり、次第に発展して周期となり、もっとも小さい統一体から、もっとも大きな集合体へ積み上げられる。)

 

「七宝つなぎ(七宝繋ぎ)・Interlocking circles」は「円」と「四角」の「大地の表象」からなり、ズールーの大地の観念により連続文様になっていったことをノート(1,2)で説明しました。そしてそこから引き出された多くの文様は「大地の表象」として、青銅器時代以後、世界に伝播しました。このことは、マジシ・クネーネが説明していた、ズールー哲学・「大宇宙の基本構造:世界は丸く四つのゆがみに分けられる。」によって理解できました。「七宝つなぎ(七宝繋ぎ)・Interlocking circles」は、四つの観念と「円」で解り易く構成されていたからです。しかし、一万年前頃に北アフリカで生まれ西アジアに伝播した「ズールーの大地の観念」は、コーカサス地方で生まれた「四角」の表象のなかに深く浸透していったようです。

 

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 (5)彩文土器碗 BC5,000年紀 イラク、アルパチヤ出土;オリエントの文様

 

この「四角」と「三角」で構成された連続文様は、西アジアのハラフ期を代表する文様です。「ズールーの大地の観念」である「円環」・「円」は全く見当たりません。しかし、コーカサス地方で生まれた「四角」で表された連続文様は、「ズールーの大地の観念」から成り立っています。「連続文様を創る」作業とは「ズールーの大地の観念」を具現化することなのでしょうか。私にはそう思えるのです。

「四角はコーカサス地方で生まれた「大地」です。しかし、「大地」のなかを満たすのは「雨」です。「雨」はズールー・「平衡の王女」の顕現の一つです。(ズールーでは、観念だけの存在はありません。個人が体感した経験の蓄積が、共同体の体感した経験になります。つまり現実的に体感できないものは存在しないので、神は具象物の顕現として現れます。神像も神の顕現したものとみなされ、具象物の顕現と同じ扱いになります。観念だけの絶対的な「神」は存在せず、「神」も遍く存在する「大地」の様に「相対的」なものとみなされたいます。)そして、「四角」に「ⅹ」は「四角の大地」を「四つのゆがみ」に分け、そこに各々「三角」があります。「三角」は写真(6)が示す様に、「平衡の王女」の顕現です。「四角」と「四つのゆがみを持つ四角」は各々に平衡の王女」の顕現を示しながら、相対的に存在し、創造を繰り返す様に「連続文様」を創ります。文様に「円」はなかったのですが、「碗」の形状に連続文様は「円環」を創っています。

 

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(6) 骨製小像 東バルカン文化 BC4,500~44,000年頃 ブルガリア北部、ルセ出土

 古ヨーロッパの神々 マリア・ギンブタス

 

「四角」の桝に「ⅹ」のステッチを入れ、「四つのゆがみを持つ四角」を創り、もっとも小さい統一体から、もっとも大きな集合体へ積み上げ、「四つのゆがみを持つ四角」の連続文様を創る「クロスステッチ刺繍」は「ズールーの大地の観念」の具現化です。

 アルタイ山脈辺りで最古の刺繍が見つかっているようです。バルカン半島、スラブ民族、アルタイ、西アジア、遊牧騎馬民族・・・「クロスステッチ刺繍」の歴史も非常に興味深い物ではありますが、又にしましょう。

 

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 (7)旧ユーゴスラビア・クロスステッチ刺繍;BRODERIES YOUGOSLAVES

 

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 (8)旧ユーゴスラビア・クロスステッチ刺繍;BRODERIES YOUGOSLAVES

 

具象的な花に見えますが、「四つの観念」の連続文様です。

 

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 (9)旧ユーゴスラビア・ク ロスステッチ刺繍;BRODERIES YOUGOSLAVES

 

 西アジア発祥の「生命の樹」がク ロスステッチ刺繍で創られる。まさに、「成長を通して物事は活発になり、次第に発展して周期となり、もっとも小さい統一体から、もっとも大きな集合体へ積み上げられる。」ズールーの観念の具現化を美しく見るようです。「鳥」と「花」、西アジア発祥の表象で成り立っているのですが、「三角」で満たされた空間が、ズールーの観念「平衡の王女」の顕現を示します。

 七世紀にアジア系遊牧騎馬民族のアヴァール人と共にバルカン半島にやってきたスラブ民族のクロアト族(クロアチア人)とセルブ族(セルビア人)は、現在の居住地にてアヴァール人と戦い、定住しました。農耕民である当時のスラブ民族の中で、強敵のアヴァール人と戦った稀な民族です。「一説によれば、かってヨーロッパに侵入した騎馬遊牧民サルマティア人がスラブ人の間で暮らすうちにスラブ化されたものとされる。」(森安達也;世界の歴史ビザンツとロシア・東欧)はどうやら本当の様です。西アジアで生まれた「ズールー観念の四角連続文様」をバルカン半島に運び、旧ユーゴスラビアの民族的な文様としたのは、中央アジアから北コーカサス、西アジアに進出、そしてアルタイ、更に黒海東北沿岸・北コーカサス、そしてバルカン半島と移動した騎馬遊牧民サルマタイであったかもしれません。そうすると、「クロスステッチ刺繍」と「ハート形表象」は一部で同じ道を辿ったことになります。「ハート形表象」の話に戻り、彼らの足跡を辿りましょう。

 

 

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