洞窟壁画(PAINTED CAVES)
米科学雑誌サイエンス電子版
(13)米科学雑誌サイエンス電子版に発表された洞窟壁画:話のネタ帳
(14)西ヨーロッパ・後期旧石器時代の洞窟壁画
PAINTED CAVE S ANDREW J. LAWSON
「ネアンデルタール人が描いた? 世界最古の洞窟壁画」、「スペイン北部の世界遺産のパシエガ洞窟の壁画が世界最古の洞窟壁画であることが国際研究チームの調査でわかった。現生人類はとうじ欧州におらず、絶滅した旧人類ネアンデルタール人ガ描いたものとみられる。米科学雑誌サイエンス電子版に発表された。」(配信された写真13)
朝日新聞デジタル;2018年2月23日04j時00分
このニュースをTVで見て少し驚きました。まだこんなニュースが「サイエンス」に載るのか!
写真を見て下さい。旧石器時代・洞窟壁画の分布です。どう見ても、イベリア半島から北に広がっているのが解ります。現生人類(ホモサピエンス・サピエンス)がアフリカ大陸に生まれて約20万年、「赤と渦巻・ Nassarius gibboslus(ムシロガイ)のShell jewelry」(参照) で見たように、11万年以前にレバント地方で「巻貝を採り(漁業の始まり?)、ビーズに加工したものを女性が身につけました。この東地中海に生息する「巻貝・ Nassarius gibboslus」のビーズはアルジェリアやモロッコでも見つかっています。陸続きだったイベリア半島から北への進出は11万年以降であれば、可能性を考えなければいけないと思います。
インド・ヨーロッパ諸語の中に孤島のようの残ったコーカサス諸語とバスク語の類似と相異は、祖地アフリカ祖語の類似であり、部族と出アフリカ経路の違いと考えれば、このルートがより鮮明に見えてきます。イタリア半島から北に向かった部族は「ヴィーナス像」を多く作り、イベリア半島を北上した部族は「洞窟壁画」を特徴としています。
この時代、両半島は氷で繋がっています。
(15)洞窟壁画とヴィーナス像の分布;分明の誕生 江坂輝彌 大貫良男
そして洞窟壁画を多く残したイベリア半島北上部族には、もう一つので文化的特徴があります。
それは「蜂巣ハンター(蜂蜜と幼虫)」であったことです。(アフリカの狩猟採集民族の多くががそうであったように)彼らの文化が育った熱帯雨林では、一年中花が咲き、蜂は一年中蜜を集め幼虫を育てます。つまり、「蜂巣ハンティング(蜂蜜と幼虫)」は一年中可能であり、生活の中心にあったはずです。現生人類以前から「蜂巣ハンティング(蜂蜜と幼虫)」の文化はアフリカの地にあったと考えるのが自然です。
今回、「サイエンス」に発表された壁画は、サン人の「蜂巣ハンティング(蜂蜜と幼虫)」壁画とよく似ています。
(16)洞窟壁画「蜂巣ハンティング」 Natal Drakensberg Cave,Southafrica
ミツバチの文化史 渡辺孝
(17)洞窟壁画「蜂巣ハンティング」 Natal Drakensberg Cave,Southafrica
ミツバチの文化史 渡辺孝
南アフリカ「Northern Khahlamba-Drakensberg」のサン人が描いたとされている洞窟壁画(写真)と見比べてください。濃い色は蜂蜜、白っぽい部分は蜂の幼虫、点々は群れて飛ぶ蜂(蜂を表す点々は必ずハチの巣のそばに描かれます)です。「梯子」は後にアフリカで神聖な図形となり(後日説明します)、変容して「梯子、階段」を神聖なものに近づく意味の表象にします。神に近づくには「階段」を登らなけれならないことの原義です。
私は、「サイエンス」に発表された壁画(写真13)は、「ハチの巣と蜂」だと思います。下の方には蜂が大きくリアルに描かれているではありませんか。
ちなみに写真(14)西ヨーロッパ・後期旧石器時代の洞窟壁画には多くの「ハチの巣」が描かれています。
(18)西ヨーロッパ・後期旧石器時代の洞窟壁画 (多くのハチの巣が描かれています)
PAINTED CAVES ANDREW J. LAWSON
「サン人」とは「ブッシュマン」のことで、新人の中で最も早く分岐したハプログループA系統が高い頻度で現れる、アフリカ最古の住人です。つまり彼らの文化は、新人の歴史20万年の初期に位置づけられるのです。「サン人」の洞窟壁画として「Northern Khahlamba Drakensberg South-Africa」が有名ですが、BC3,000年以前(バンドゥーの東進、南下以前)の居住地には、今回発表された洞窟壁画以前の壁画が見つかるはずです。
今回の発表は、ソリュートレ文化の担い手が「コーカソイド」のクロマニヨン人だと発表することと、同じような意思が感じられるのです。私は、「クロマニヨン人」とは、「クロマニヨン岩陰」で見つかった、アフリカから進出してきた新人(ホモサピエンス・サピエンス)」と考えるのです。「クロマニヨン岩陰(ABRI De Cro-Magnon)」では「貝のビーズ」も見つかっています。ヨーロッパやコーカサスで進化した新人(ホモサピエンス・サピエンス)は、遺伝子的にも、人類学的にも、表象的にも視止められません。
ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」を見てから、「バスク」と「養蜂」がずっとリンクしていました。今回の洞窟壁画は「バスク」の近くですね。それから、私の故郷・徳島県三好市でも、私が子どもの頃、「蜂の子」は特別なご馳走でした。