形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

ドングリ

2010.10/20~11/2. 日本橋三越本店1階アクセサリーサロンにて「どんぐりフェア」を開催します。

ドングリは長い間、ジュエリーデザインのテーマとして取り組んでいます。可愛いドングリを作ると言って頂いてもいます。ドングリ図鑑もいろいろな本を読んできました。今回は可愛らしいフォルムだけでなく、ドングリの持つ文化史的な意味も理解しようと思い、いろいろな本を読んできました。

数か月前、一冊の本と出合いました、「ドングリと文明;著者、William Bryant Logan」この本からのヒントは、今まで蓄積してきた文化史の知識と触発して、毎日毎日、妄想と仮説が脳裏に渦巻いています。そのテーマはあまりにも広く、多岐にわたっています。女神、熊、洪水と方舟、北欧神話、ストーン・サークル、鳥のトーテム、聖ヨハネ、ケルトの女神、さい銭箱の意味、神道とドングリ、浄化の火、ナツメヤシとドングリ、神殿とオークなどなど、際限がありません。

そこでランダムなテーマを思いつくままに問題提起していきたいと思います。人間の思考回路と行動原理をドングリは謎解きます。

もう一度言っておきます、これからの解釈は私の妄想と仮説です。    

ケルトの文化を担うドルイト僧のドルイトとは「オークを知る人」の意味です。サンスクリット語で仏陀は「オークの民の聖者」を意味するようです。
インド・ヨーロッパ語族の広がりと、オークの文化は重なりを見せます。

ケルトのドルイト僧は僧であって神ではありません。ではこの僧はどの神に仕えていたのでしょうか?
彼らの神事にはオークの林と沼や湖、つまり水が欠かせません。古来、湖には女神がいます。女神への祈りや感謝は湖に剣や金を投げ入れることでした。水は羊水につながり出産の女神を表します。
湖を示す箱にさい銭を投げ入れる館の主は誰でしょう?
「オークを知る人」の神は出産の女神です。時が下り男権が強くなったとき、女神は姿を隠し水や湖で表象し、王に従う僧侶のみ残ります。女神のいなくなった女神の館は今も世界に数多く見られます。
オークは、メソポタミア文明のナツメヤシ同様オーク文化の「生命の樹」でした。
ドングリを食す文化は氷河期の終わり、1万2000年~8000年前に世界に広がりました。オークの広がりと共に。

浄火 聖火、ノウルーズ(イランの正月)、東大寺修二会、大文字焼き、ゾロアスター教、ヤズド拝火壇そしてオークの浄火。
「ドングリと文明」に「火」について面白い記述があります。

「もちろんどんな木でも火にくべることはできる。しかし、「浄火」をつけることをゆるされたのはオークだけだった。ヨーロッパ中どこでも、夏至や冬至の儀式の火として、あるいは家畜の病気がはやっているときに、「浄火」がともされた。場所によって慣習のちがい(あるところでは2人の裸の男が、別の地域では2人の少年が実行するといったちがい)はあったが、オークの厚板にあけた穴にオークの棒を押し当ててまわし、やがて木が摩擦でくすぶりだして火口が燃え始めるという手順は共通していた。この「強制的に起こした火が、新年最初の火で、地域集落のあらゆる火がここからとられた。この火の上を3度行ったり来たりで飛び越えた少女は多産になり、病気の牛はこのはいのうえをあるかせると治るとされた。」 

石器時代の人間は、2万5000年前から、陶芸や接合、ガラス製造、冶金のために本格的な土類の焼成を始めたようです。(石器時代文明の驚異;リチャード・ラジリー)
火の技術的な側面は旧石器時代から始まっていたわけです。一方、火を敬う文化はリチャード・ラジリーが指摘するように、古代インドーイラン語族の文化に多く見られます。ゾロアスター教(拝火教)はこの伝統を明確に現わすものです。ただ、気を付けなければいけないのは、ゾロアスター教以前の数々の文化がタイムラグを伴って複雑に関係していることです。オークの木と「浄火」の結びつきは、最終氷河期のあとオークの木々が広がっていったBC1万2000年~6500年を考えなければいけません。火を飛び越えた少女が多産になることや、火をつける2人の儀式はビンチャ文明の影響が見られます。牛が家畜化され、神格化もされていくのは、やはりチャタルヒュルク遺跡の周辺文化に見られます。3000年前よりも新しいゾロアスター教の表象にはメソポタミア文明の逆流も入っています。
最終氷河期のあとオークが広がっていったオークの分布図は「ドングリの文明」の広がるルートを示します。興味深いのは黒海からアフガニスタンを超えてインドに及ぶドングリの文明の流れに、まだメソポタミア文明が入っていないことです。シュメル文化の特異性は、本流ではなく、おくれてメソポタミアに飛び降り、「精霊」ではない「神と神の表象」を作り、本流をすごい勢いで逆流したことです。一方、本流の「ドングリの文明」はアメリカの古文明にまで広がっていっています。

ドングリ繋がり:ロイヤル・ウエディング;ケイト・ミドルトンさんの紋章について
ミドルトン家のものとして発表された紋章はケイトさんの役割を表現しています。ブルーのリボンにぶら下がった八角形の盾、その中には三つのドングリです。ブルーは羊水の色、そしてリボンは子供、ブルーのリボンは出産の女神を現わします。盾の八角形はメソポタミアの女神イナンナを現わし多産と多産繋がりで豊穣を現わします。そして、ドングリすなわちオークは上記の本にも出てきたように、その浄火は少女を多産にします。浄火を起こす儀式の二人のこども、又は双子は出産を現わし、浄火もまた出産の女神の象徴です。浄火すなわち火は、オリンピックの聖火のように女神を現わしゾロアスター教の時代ににおいて、浄火は女神から神、さらに男神に変容します。
ケイト・ミドルトンさんの紋章は未来の王妃としての多産を願ったもので、結婚式までのケイトさんに贈られたものです。

話を元に戻しましょう。イランの正月のノウルーズとは、まさに少女が浄火を飛び越し多産を祈る儀式です。インド・イラン語族以前の文化の多くが,現在もイランには残っています。浄化と女神と多産の関係は日本でも奈良県大神神社で正月に行われる「御神火まつり」などに見られます。つまり、三輪山の精霊はかなり古い時代に山の精霊と北から来た蛇が敬われ、次に浄火の女神が「天の鳥船」に乗りやってきたことになります。神社本殿などを作った「天の鳥船」はその後になります。    
私事ですが、仕事ついでに厳島神社と大山祈神社に行ってきました。「流造」、「ハートの文様」「浄火」などから古い神性が窺えました。同時に、ここでも「天の鳥船」による「国譲り」が何度かあつたようでした。
厳島神社の「3人の女神」、三輪山の [3],この「聖数3」は旧石器時代までそのルーツを辿れます。人間の文化の根幹に関わります。ケイトさんの「3つのどんぐり」にも3人兄弟以上の意味があるかもしれません。ビンチャ文化の多産の女神もしばしば「3本の線刻」を胸に刻まれています。ルーツはそれ以前に見られます。また同じ「浄火」でも「大文字焼き」はインド;インダス文明で変容されたもので、比較的新しいと思います。白川静氏もこのことは研究されています。
日本のことになるとはぎれが悪くなります。これ以上は講義でします。
文化服装学院 工芸科3年生諸君、9月から文化史の集中講座です。いっぱい、話し合いましょう。   
とてつもなく、忙しい1年でした。どんぐりの販売会からもう少しで、またどんぐりの季節になります。
ただ出張も多く、本を読んだり、考える時間も多かったせいで古代表象は旧石器時代まで流れをる遡ることができました。
最後に、オークと浄火の結びつきは黒海の出来事に始まったと思います。
P.S.
今年の講義は大変充実しました。
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アンズーはビジョンとともに羽ばたき、世界は原初の水から、渦巻とともに原初の岡が生まれる。
形あるものと装飾は黙して語る。真実を語る。

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