形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

Jugendstil(ユーゲントシュティール);青春様式

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ブログ用アイコン写真の懐中時計です。何人かの人に聞かれましたので、ご紹介します。1988年プラハ(チェコ共和国)で買い求めた「Jugendstil(青春様式)」の「エナメル金彩」と「Painted enamel or LImoges]が美しい、装飾時計です。1993年、「プラハの春」はソ連邦解体にすすみ、チェコ人とスロバキア人は1648年以来の民族自治を獲得しました。民主主義路線を歩む「ボヘミア」へヨーロッパのアンティーク業者は殺到します。旧(株)鐘紡の仕事に没頭していた私は、完全に出遅れてしまいました。それでも・・・と行ってはみましたが、めぼしいアンティークは皆無でした。たったの一個も見つかりません。そんな時、アンティークの時計業者が持っていたのがこの懐中時計です。あまりの美しさに、すぐにタクシーを借り切り、市内のアンティーク時計店を全て回りました。仲のいいヨーロッパのアンティーク業者の言葉を思い出していたのです。「懐中時計は需要がないんだよ!」。はたして十数個の装飾時計を見つけることが出来ました。数日後はクリスマス、テーマパークのようなミサとパイプオルガンの響くプラハの街は、中世の幻想都市。神聖ローマ帝國;カレル四世が都と定めた花のプラハ。そのカレル橋のたもとの教会に「パイプオルガンコンサート」の予約を入れ、厳粛なクリスマスの夜を過ごしました。

「Jugendstil(青春様式)」は19世紀末、ドイツ語圏での建築、芸術、工芸、装飾、音楽などあらゆる分野での様式です。ドイツ版アール・ヌボと言われていますが、この装飾時計がアール・ヌボ様式に見えますか?全く違います。同じなのは世紀末の新しい様式運動のコンセプトだけです。「Jugendstil(青春様式)」の建築をみても、やっぱり「青春」だなと思える色使いです。そしてこの様式は1918年「オーストリア・ハンガリー二重帝国」の解体により終わりを告げます。この懐中時計はハプスブルグ帝国最後の置き土産です。当時、時計工芸はドイツ語圏の産業でしたので、民族自治運動の最中にあったチェコ人の、この美しい時計に対しる複雑な思いも、「Jugendstil(青春様式)」を熱心に説明してくれたチェコ人学生の言葉から感じました。世紀末の夢の様に、ドイツ語圏で二十数年だけ作られた時計です。手に入れた懐中時計は、顔の見える人たちの手に渡り、この二個だけが、1988年プラハの想い出と伴にあります。

 

 

 

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