形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

「羽子板、扇」が導いたこと(16)酉の市 ;氷川神社

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(1)フンババ;BC1,700頃・大英博物館所蔵

各種資料より和久譲治製作若干の違いあり

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(2)フンババ;BC1,500頃・ルーブル美術館所蔵

遠藤孝秀氏撮影;個人的ページ:目次)

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(3)フンババ(中央)BC10世紀・新ヒッタイト・カルケミシュ出土・大英博物館所蔵

遠藤孝秀氏撮影

氷川神社の境内より、かなりの事が解ってきました。しかし、肝心なことが問われていません。1.「門客人神社」は誰を祭っているのか?2.なぜバラモン教の影響があるのか?なぜバラモン僧はインドを離れたのか?バラモン教の隆盛期はBC12世紀 からで、この時代にインドを離れる理由とは何か?「門客人神社」は「アラハバキ・荒吐神」と関係があるとされています。客人となった「アラハバキ」とは誰なか?1.2.の疑問は「誰が磐船に乗って来たのか?」のようです。BC15世紀~BC13世紀「磐船」はどこから来たのか?今まで見てきた事柄から、江南・良渚文化、インド、地中海文化圏がぼんやりと見えていますが、時間軸はこのルートを繋ぐのでしょうか?始めましょう。

まず「磐船」と同じ時間軸で現れた「形而下の石・ミミズク土偶」が推理の入り口になるでしょう。頭にある「三個の突起」は生殖表象「チューリップの女神」からの変容を示しています。カプサ文化がレバント地方に出て変容した「生殖表象」です。カプサ文化のイタリア半島ルートは、もう一つの「大地」の表象から「ゴルゴン」が生まれました。それならレバント地方ルートの「大地」の表象はどんな変容をしたのでしょうか。この地方は「生殖」・「大地」両方の表象を併せ持つ「大地母神」が多く語られます。しかし、「生殖表象」が「チューリップの女神」に変容した時には、「大地」の表象は、別に存在したはずです。「チューリップの女神」と「大地母神」を繋ぐ存在が「初期のクババ」であるなら、同じ様な呼名を持つシリア・北メソポタミアの神「フンババ」がどうにも気になります。

(1)フンババ;BC1,700頃を見て下さい。(4)大正11年尖石遺跡で発見された土偶と同じような「頭の芋」があります。つまり、「Chevron(Cheveron仏古語)」を持つ、「石刃」由来の「豊饒の大地神」なのです。(4)の土偶は更に翼、乳房、誇張された女性器、妊娠線など「生殖表象」を併せ持っているので「豊饒の大地の女神=大地母神」になります。(1)フンババの全身はわかりませんが、顔はすべて「一筆書き」になっています。

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(4)尖石;宮坂英弌著:画家宮坂春三氏、大正11年尖石遺跡で発見;東京大学理学部研究室所蔵

つまり、シリア・北メソポタミアの「蛇に守られた大地」変容は、「大地」を「蛇」で埋め尽くすことになったようです。「大地を蛇で埋め尽くすといえば、氷川神社の「御神紋」は「円盤石刃=丸い大地」を埋め尽くす蛇です。(6)「Grotta of Porto Bdisco・Italia]の洞窟壁画(BC6,000)に描かれた蛇によく似ています。

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(5)氷川神社

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(6)「Grotta of Porto Bdisco・Italia]の洞窟壁画(BC6,000)

そういえば、日本にも「ミミズク土偶」と時を同じくして出現した、大きな体を「Chevron(Cheveron仏古語)」で埋め尽くす土偶がありました「中空大土偶」や「超大型土偶」、「合掌土偶」と呼ばれている土偶です。「円盤石刃」のような丸い頭、一本になった眉や「Chevron(Cheveron仏古語)」された口の表現が「ミミズク土偶」と同じ文化を感じさせます。また「合掌」とは、手を合わせることではなくて、「白川郷・合掌造り」の様に、V字の「石刃打欠き痕」・「Chevron(Cheveron仏古語)」を両腕で作ることです。

 BC1,500年頃の(2)「フンババ」を遠藤孝秀氏がルーブル美術館で撮影をしています。そして(3)「フンババ」はBC10世紀・新ヒッタイトのレリーフを大英博物館で撮影です。きわめて面白い写真です。(1)フンババ;BC1,700頃は「ミミズク土偶」より以前からの、むしろ「チューリップの女神」に近い時代からの姿だと思います。それが、BC1,700~BC1,500年の間に何があったのでしょうか、見るものを石化させる、「ゴルゴン」と同じ特性を持つ「蛇に守られた大地」の「クババ」が人型の「レバノン杉の番人」にされているのです。もちろん、シュメルの「ギルガメッシュ叙事詩」はBC2,500年頃のものですが、「アッカド語」に書き直されたものはシリア・北メソポタミアがヒッタイト帝國に支配された頃のものだと思います。シュメルではこの地で生まれた、「合成獣(出産の女神の聖獣を合成した獣)」として描かれたはずです。ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「前足が獅子、全身に固いうろこ、足は禿鷹の爪、顔には野牛の角、尾と男根は蛇」は全て聖獣の特性で、納得が出来ます。そして、「ギルガメッシュ叙事詩」のなかで「口は火、息は炎」と描写されているのは「荒吐」に通じませんか?なぜ「フンババ」の姿は変ったのか?、それはこの神がこの地を離れる理由にもなります。

 

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