形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝(4)      国立西洋美術館

今回の展示品のなかで「表象、文様」の変遷において、非常に重要なものがミケーネ文化の「金製円形飾り板」です。地中海文化圏ではBC5,000年頃に、「羽子板、扇」が導いたこと(12)・写真(7)「Chevron(Cheveron仏古語)」、「Me'andre(Meander(英)」の土製円盤に見らるように、「 円盤石刃」に「Chevron(Cheveron仏古語)」や「Me'andre(Meander・英)」を刻することで、「豊饒の大地」を表す、神聖な表象を作っていました。写真(4)の「円形飾り板」には、その縁に「Chevron(Cheveron仏古語)」が見られます。そして、その「Chevron(Cheveron仏古語)」マークに収まる「具象物」を更なる文様として発展させています。

 

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(4)金製円形飾り;ミュケナイ、円形墓域A,第三号墓、ギリシャ(BC16世紀後半)

 

「Chevron(Cheveron仏古語)」から導き出された「蝶」と「浜昼顔(Calystegia Soldanella)」が「型押し(die stamping)」されています。これにより、「蝶」と「浜昼顔(Calystegia Soldanella)」も「豊饒の大地」を表象するシンボルとなります。「生命の樹・柘榴の女神」が仏教に取り入れられ、日本で変容した姿が「鬼子母神」ですから、「朝顔市」が「鬼子母神」の周辺で開かれるのは、ギリシャにおける両者の結びつきから来ていることだと思います。人類が最初に持った二つの表象、「豊饒の大地」と「多産・生殖」の結びつきです。それから、この「蝶」は日本の「平家」が使っていた文様によく似ています。

「 朝顔の形」について参照

 

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(5)金製円形飾り;ミュケナイ、円形墓域A,第三号墓、ギリシャ(BC16世紀後半)

 

左二列は「大地」を表す円板を「蛇」と同心円の「生殖表象」で埋め尽くしています。「蛇」は「Me'andre(Meander・英)」の具象形、「生殖表象」を併せ持つことで、大切な二つの表象が結びつき、「豊饒と多産・の大地」となります。右の列は円板に「Chevron(Cheveron仏古語)」が刻され、(4)同様に花紋が引き出されています。この「豊饒の大地」に同心円の「生殖表象」を組合せ、「豊饒と多産・の大地」は完成しています。

 

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(6)金製ロゼッタ紋飾り;デンドラ、ギリシ(BC14世紀)

 

これは単に「ロゼッタ文様」と呼ばれますが、色々な花形を全て「ロゼッタ」ではあまりにも大雑把すぎます。その成り立ちや、(7)のような特殊な花形にはそれぞれ表象する対象物の違いがあります。(6)は「ホタテ貝」や「パルメット」と同様にアーチ形の「Chevron(Cheveron仏古語)」を内向きにした連続紋から引き出されています。よって「豊饒の大地」を表す文様で、花形は後付けで、色々に当てはめられます。この花形紋は、確かに「ロゼッタ文様」という、「豊饒」を表す普遍的な花の呼び名が相応しいのでしょう。日本では「菊」ですが、ギリシャだけでなく、古くはメソポタミア、エジプトから朝鮮半島やイランにも同様の花紋があり、呼名はそれぞれ違うはずです。ただ写真のような「八弁花(連続紋としては四弁花・七宝つなぎ文様)」に限って言えば、初めて想起された「生命の樹」、「ナツメヤシの花」です。「八弁」から「四弁」への変容は、花弁を交互に、二色に彩色して、連続紋を作ったとき、それぞれの色彩が「四弁」の連続紋に見えます。この各段階サンプルは、メソポタミア文明からエジプト文明への「ナツメヤシの花」伝播ルートに見られます。

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(7)金製ロゼッタ紋飾り;ダーダネルス海峡、ギリシャ(BC4世紀)

二重花に多くのおしべ、個性的な花紋です。「八弁花」ではありますが、この花紋を普遍的な「ロゼッタ紋」と呼ぶのには抵抗があります。この時代のギリシャに現れた背景を探るべきでしょう。この時代、意味のない「装飾文様」はありません。次回は謎解きを試みてみます。とにかく、今回これだけの「飾り板」が見られることは、非常にうれしいことです。

 

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