形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)ズールーの概念と貝の文化(14)

 

チャタル・ヒュユク( Çatal Hüyük)の終焉と雨による平衡の女神

     雨の表象を翼に持つVulture(ハゲワシ)

 

 

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(56)fresco of Çatalhöyük;チャタル・フュユク第七層・祠堂

        THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas

 

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(56)fresco of Çatalhöyük(拡大)

  胴体に「手」と「平行線」いずれも「雨」の表象

 

トルコ南東部にBC7,500年から続く、18層にわたるチャタル・フュユク遺跡の最上層はBC5,600年頃のものです。(参照) そしてBC5,600年頃はちょうど「黒海大洪水」が想定されている年代にあたります。写真(56)の祠堂は第七層にありますが、壁画(フレスコ画)に表されている表象は明らかにそれまでのチャタル・フュユク文化と違っているのです。大切な時間軸ですが、あえて表象のみから見た考察をします。後日、さらなる情報により修正するつもりですが、それほどこの祠堂壁画の表象は,後の表象文化にとって重要なものだと考えています。

長い間何層にもわたりチュタル・フュユク遺跡では、巻貝にルーツを持つヴィーナス像(出産の女神)が作られています。写真(57)の聖獣ライオンの椅子に座った女神像が代表的です。そして、ライオンがヴィーナス(出産の女神)の聖獣であることは、後に意味を持ってきます。

 

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(57)チャタル・フュユク遺跡の聖獣ライオンとヴィーナス像(出産の女神、えい児の頭が見える);wikipedia

 

「巻貝」を持ってアフリカを出た新人から続く文化が、脈々と続いていたことが解ります。しかし、このヴィーナス像は祠堂の穀物庫から見つかり、祠堂壁画に「出産の女神」の表象(渦巻きなど)は見つかりません。私は「ヴィーナス像(出産の女神)」こそがこの祠堂に本来祀られていたと考えます。何が起こったのか、祠堂の表象を読み解いていきましょう。

 色々な表象を読み解いていくと、南仏で始まった「雨による平衡の概念」と「コーカサス地方(東アナトリアを含む)の神格」が見えてきます。

「雨による平衡の女神」の表象(参照)「二枚貝の▽」、「水玉・」、「ギザギザ線の雲」はすぐにみつかります。しかし「豚鼻」は「水牛の鼻」に置き換わっています。「コーカサス地方(北東アナトリアを含む)」で神格を持つ動物は最高神の「鳥」のほかには「牛(本来水牛)」と「ライオン」になります。この地方の王国・ウラルトゥ(BC8世紀)の神々も鳥、牛、ライオン、そして翼を持った水玉になります。この祠堂壁画に「ヴィーナス像(出産の女神)」の聖獣ライオンを加えると基本的に変わっていません。もちろん王権が確立したこの時期には、主神が「鳥」から都市神「ハルディ神」に変化するなどします。面白いのは「ハルディ神」が乗っているのは「出産の女神」の聖獣ライオンです。旧石器時代より長い間この地に根ざしていた「出産の女神」は、「大地母神」の神性を持っていたようです。そのためこの地域では、ライオンは「大地」を表すようになります。「獅子舞」が大地の豊饒を祈願して舞われるのはこの神性によります。「ライオン」は「大地」、獅子の体の文様は「雨による平衡」を表します。(参照)

「豚鼻」の「水牛の鼻」への置き換は、「雨による平衡の女神」が顕現する「豚鼻」のコーカサス地方的な神格化の為かもしれません。「牛の角」はこの後「コーカサス地方的な神格」化の表象として現れます。

そして「シヴィニ神」は跪いています。「跪く」は地下を意味し「冥界神」の意味が 付加されていることの証です。

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(58)拡大「豚鼻」から変化した「牛鼻」

 

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(59)ウラルトゥの神々;幻の国ウラルトゥをさぐる ボリス・ビオトロフスキー

シヴィニ神が「Vulture(ハゲワシ)」になった「雨による平衡の女神」がさらに変容した「翼を持った水玉」です。よく「太陽円盤」と言われますが、太陽が本格的に表象化されるのは、「Vulture(ハゲワシ)」になった「雨による平衡の女神」の約千年後で、場所も遠く離れた地中海・サルデーニャ島になります。コーカサスの概念が強い所では「翼を持った水玉」と解釈するべきでしょう。それに「太陽」の表象には後光やコロナが必ず伴います。「自由の女神」のティアラ(王冠)のような形です。

 

 

平衡の表象「V]で表される人形も見つかりません。「雨による平衡の女神」は「雨の翼を持った「Vulture(ハゲワシ)」になって人を襲うか、啄んでいます。アナトリアでは「Vulture(ハゲワシ)」による「鳥葬」の風習が認められています。しかしなぜ「雨による平衡の女神」が「鳥葬」の「Vulture(ハゲワシ)」にならなければいけないのでしょう。壁画の「Vulture(ハゲワシ)」が「雨による平衡の女神」であることはまちがいありません。写真(56)fresco of Çatalhöyük(拡大)を見て下さい。「雨」の表象の「翼」の他に、胴体に「雨」の表象である「手」と「何本もの平行線」が描かれています。「水」の表象「三本線」を持つ鳥もいます。壁画の「Vulture(ハゲワシ)」は「雨」と「水」の表象であふれているのです。

コーカサス地方においては「神」は「鳥」なのです。(コーカサス地方原産の「野ブドウ」・雌雄異株の受粉は鳥により、鳥の精霊が生まれました。この地域でもナツメヤシ、イチョウなどが雌雄異株です。)少なくても神格を持つためには「翼」を持たなければいけません。翼を持つギリシャの女神がコーカサス地方からもたらされたのは良く解っていることです。(ニケなど)

考えられるのはヨーロッパで大地を再生させた「雨(水)」に、新しく「人の命を奪う」といった概念が加わった事です。「雨による平衡の女神」は「神」でありながら、コーカサス地方、アナトリア東部の沿岸地方では、多くの人の命を奪ったと解釈されたのです。このことは、この後に現れる「雨による平衡の女神」の変容した女神たちは「人間の運命を操る女神」や「冥界の女神」、「子供をさらう女神」といった側面を持つことになります。これらのことを考えると祠堂の壁画は単なる鳥葬ではなく、雨と水が人を襲う災害・「洪水」だと考えるのです。また、そうだとすると「旧約聖書」を待たずして、「大洪水」は「神」の仕業だとする考えが生まれていたことになります。

そしてやがて、壁画を含めた「チャタル・フュユク祠堂」の概念すべてを表象に持つ女神が、メソポタミアに現れます。女神「イシュタル」です。女神「イシュタル」は「Çatalhöyük」祠堂で複数の神格が融合して生まれた言えます。wikipediaによれば、ローマ神話のウェヌス、ギリシャ神話のアフロディーテ、アッカドのアヌニートゥ、バビロンのベーレト・バビリ、カナンのアスタルテ、シリアのアタルガディス、エジプトのアナトなどが同じ起源とされています。メソポタミア文明期以後は権力や神学により、機能の分解、習合、変容を繰り返し、信仰も細分化していきます。そして男神の時代になります。ヨーロッパ、アナトリア、コーカサスの概念が作り出した、最後の女神「イシュタル」の表象を精査しましょう。そうすれば、以後の神々の正体が良く見えてきます。

 

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訂正

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 (35)ETORURIAパテラ 銀、鍍金;パレストリーナ、コロンベッラ墓地、ベルナルディーニの墓、イタリア(BC7世紀第一四半期

 「翼を持った水玉」が解り、この「ETORURIAパテラ」の図案が「コーカサスの概念」とコーカサス地方の風土であることは正しかったのですが、拝火台の横の台は「供物台ではなく、「火」にたいする「水滴」を備える台だったようです。そうすると、その上にある「翼を持った水玉」が「火と雨による平衡」を示すことになります。(参照)

 

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 (39)写真(35)ETORURIAパテラ(拡大)

 

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(42))(35)ETORURIAパテラ(拡大)

 

 

 

           

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