形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)ズールーの概念と貝の文化(15)

 

  「イシュタル」の持つ「神格」の表象

 

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(60)拡大

 

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(60)Burney Relief・イシュタル;wikipedia

 

写真(60)のレリーフに関してはイシュタル、イナンナ、リリトなどと議論が続いているようです。大英博物館の展示名も「Burney Relief」となっています。私は「イシュタル」で良いと考えます。「イナンナ」はナツメヤシの豊饒神として現れますが、「イシュタル」に習合されていた「ビーナス(出産の女神)」の神格がメソポタミアで分岐した女神です。後に出てきますが、「形而下の石」に視るメソポタミア原初の三神には入っていません。そして当然「ビーナス(出産の女神)」ですから「翼」は持っていません。「リリト」は「翼」を持った「魔物」です。ところがこのレリーフの女神は頭に「神格」の表象である「多層の角」を持っています。重要な「神」を表しています。確かに「リリト」は「イシュタル」の貶められた姿です。メソポタミアでシュメル人の支配が終わったとき「イシュタル」のみならず「鳥」、すなわち「翼」を持つ神は「北に住む魔物」になります。

これらのことを証明するためにも「イシュタル」の持つ「神格」の表象を詳細に見ていきたいと思います。そうすれば、メソポタミアに現れた「原初の三神」と「シュメル人」の正体と「チャタル・フュユク」の「祠堂壁画」が繋がります。

「イシュタル」の持つ「神格」の表象その(1)は「両方の手で作る表象」です。

 「イシュタル」は「チャタル・フュユク」の「祠堂壁画」で見られるすべての「神格」が習合しているために、「雨による平衡の女神」には見えません。そこで、「雨による平衡の女神」が基本にあることを、一番解り易く、目立つように表しています。この「雨・〇」と「×・平衡」による「雨による平衡・♀」の表象は何度も説明してきました。(参照)

 レリーフの「雨による平衡・♀」の表象は「手・雨」の表象も組み合わされています。本当に新しい表象を作る時の「ひらめき』に感心してしまします。デザイナーのはしくれとして思うのですが、言語を介さない観念の具象物から具象物への飛躍が見られます。

しかし、これまでの「雨による平衡・♀」と「チャタル・フュユク」後の表象とを比べると、明らかに概念に変化が見られるのです。「イシュタル」の持つ「雨による平衡・♀」には「Vulture(ハゲワシ)」の「翼」(参照)が加わっています。

同じ「イシュタル」の持つ「雨による平衡・♀」の表象を持つ以下の「形而下の石」にそれを見ていきましょう。頭部分の「o」と「□」については、その中ですぐに理由が現れてきます。

 

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(61)Proto-Nuragic Monuments(プロト・ヌラーゲ)・サルディーニャ

   Shepherds,sailors & conquerors  

 

BC5,000年頃まで南仏、イベリア半島、イタリアなど大陸の文化の影響で展開してきたサルデーニャ島の文化は、この頃より北アフリカの影響が強く表れます。

 写真(61)の「Proto-Nuragic Monuments(プロト・ヌラーゲ)」が島の中西部「Oristano」近くに作られたのはBC2,400~2,100年の頃です。「Oven-shaped tomb」と呼ばれています。私はこれを見たとたんにキュクラデス諸島(Cyclades)にBC2,800~2,300年頃現れた「Frying pan」が頭に浮かびました。同じ形に、同じ概念の存在を感じたのです。「Frying pan」はキュクラデス諸島の墳墓で見つかり、「渦巻き」と「三角」の文様で埋め尽くされた「子宮(womb)」の形をしています。そうです、間違いなく「子宮」です。「子宮」の入口に大きく「三角」に「割れ目」が見られ、[平衡の王女」の陰部を表象しています。同じ表象が、写真(69)キュクラデス諸島の墳墓で見つかっている「平衡の王女」像にも見られます。「平衡の概念」は腕の組み方に表されています。この「平衡の王女の子宮」と王女像の組合せが、実はサルデーニャ島で見つかっているのです。「Proto-Nuragic Monuments(プロト・ヌラーゲ)」に2,000年も先立ち、キュクラデス文明の1,500年前、BC4,500年頃、しかもサルディーニャ島の「Proto-Nuragic Monuments(プロト・ヌラーゲ)」と同じ場所「Oristano」にあります。

「Oristano」の「Cuccuru S'Arriu」にある「Oven-shaped tomb(竈型の墓穴)]に葬られた人骨の傍らに、女神像が置かれているのです。この女神は「Bonu Ighin culture(4,000~3,400BC)」の「Bonu Ighinu(Sarudian languageでGood Neighbor) 」だと考えます。崇める「神」ではなく「寄り添う神」の概念が感じられます。ルーマニアの「Cucuteni culture]や日本の縄文時代の「土玉」などのように、家の中にも普通に置かれているのです。そのため「神」ではないと考える人もいます。ですが「ズールーの概念」の「先祖」や「神」は、寄り添うのが基本です。「子宮型」の洞窟と「寄り添う女神」はキュクラデス諸島の墳墓と同じ概念のもとに葬られています。そしてその両方の文化に「イシュタルの表象「♀」は現れています。サルデーニャ島に関しては、大切な「太陽の表象」を発展させ「太陽と雨による平衡」の表象が見られる場所です。スペイン、北欧の「巨石文明」から「メソポタミア文明」までの「るつぼ」であるこの島の表象については「イシュタルの表象」の後で詳しく見ていきます。

 

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(62)Nuraghe(ヌラーゲ)・サルディーニャ

  地中海の聖なる島サルディーニャ

    

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(63)ヌラーゲ時代の聖なる泉の上に建てられたサン・サルバトーレ(救世主)教会

  地中海の聖なる島サルディーニャ

 

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(64)ロマネスク様式(Romanesque)の教会平面図

  ROMANESQUE ULLMANN & KONEMANN

   

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(65)大仙陵古墳(伝仁徳天皇陵)、大阪府堺市

 

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(66)アクアバ人形(和久コレクション)

 

 

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(67)Frying pan Eaely Cycladic Ⅱ、Chalandriani,Siros 2800-2300BC

       ARCHEO・エーゲ海文明

 

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(68)Frying pan Eaely Cycladic Ⅱ、Chalandriani,Siros 2800-2300BC

       ARCHEO・エーゲ海文明

 

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(69)大理石製平衡の王女像;キュクラデス諸島、シュロス島、クマサ島(左より)

    Eaely Cycladic Ⅱ、Chalandriani,Siros 2800-2300BC

        ARCHEO・エーゲ海文明

 

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