形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)ズールーの概念と貝の文化(24)

 

「イシュタアル」の表象(3)

新たな発見-雨による平衡の女神のポーズから解ること・バルカン半島(7)

鳥女神の出現 BC5,000年頃

 

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(99)バケツを持つ鳥神;イラン西北部出土

  ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸;コーカサス古代文明展図録

  古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館

 

「鳥の表象」は世界中に溢れていますが、「鳥の表象」、「鳥のトーテム」が「コーカサス地方(アルメニア、西部イラン、東部アナトリアを含む)」に始まったことの認識は比較的なされていないと感じています。BC5,000年頃、バルカン半島に「鳥の表象」が現れた時代、表象化の初期段階であったと思われるのです。

 

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(100)鳥と牛、ライオンの神格を持つ女神;イラン西北部出土

  ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸;コーカサス古代文明展図録

  古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館

 

「雨による平衡の女神」がコーカサス地方に伝播した時に、既に長い間概念化されていた「豊饒の鳥妖精(ブドウなど雌雄異株植物に受粉させる鳥妖精)」と同じように受け入れるため「鳥の神格」が付加されたと考えます。「豊饒」の原義に「大地のバランスの取れた良い状態」があるように「雨による平衡」は「ブドウなど雌雄異株植物の受粉」と同じく「豊饒」に結びついています。コーカサス地方で「雨による平衡の女神」が「鳥の神格」を持たされた理由だと思います。

コーカサス地方において長い間、既に概念化されていた「豊饒の鳥妖精」の表象化はなされなかったようです。その後「雨による平衡の女神」の神格化、表象化に伴い、「鳥の大神」もその姿を現しますが(初期段階のメソポタミア文明、エジプト文明に見られる)、メソポタミア文明に於いてはその後、姿なき「天空神アン」なります。「天空神アン」は最も重要な神でありながら、人間界に姿を現しません。このような理由で「豊饒の鳥妖精(大神)」と「鳥の神格」が付加された「雨による平衡の女神」が現れた貴重な遺物を確認します。この表象化はバルカン半島でさまざまに融合した「Cheveron・ V,X](参照)」などに「雨・〇、……、・・・,///」などを組み合せて作る「人形の神」や地中海海洋民の「二枚貝の女神」そして「人の姿をした北アフリカの神」に触発されてなされたと考えるからです。

   

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(101)二羽の鳥・ベルト飾り;トルコ東部出土

  ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸;コーカサス古代文明展図録

  古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館

 

写真(99)が「豊饒の鳥妖精(大神)」です。手にもつバケツは受粉用の花粉を入れたり、ブドウを収穫するために持っています。このタイル絵は写真(102)の版図に広がった ウラルトゥ(urarutoxu)に現れた物です。また写真(100)は「鳥の神格」が付加された「雨による平衡の女神」の姿です。「翼」は「鳥の神格」、「牛の角」は「大地の統治者(メソポタミア文明ではエンリルの属性」、そして「ライオン」はアナトリア地方の「ヴィーナス(出産の女神、大地母神)」の神格、これらを併せ持つことを示しています。「ライオン」のみならず、「ネコ科の聖獣」は「安産」を表象します。つまりこの姿は「チャタル・フュユク第七層・祠堂のフラスコ画(fresco of Çatalhöyük)」(参照)現れた「Vulture(ハゲワシ)」と同じ「鳥の神格」が付加された「雨による平衡の女神」の姿です。

 

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(102)前9~7世紀におけるウラルトゥの版図

    ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸;コーカサス古代文明展図録

   古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館

 

この二羽のコーカサス地方・鳥の神々は写真(103・a、b)のように様々に表現され、「対になった動物(神)」のルーツになります。(スフィンクスや狛犬など)

 

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(103・a)ベルト;ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸;コーカサス古代文明展図録

   古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館

 

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(103・b)ベルト;ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸;コーカサス古代文明展図録

   古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館

 

写真(104)ラルサで出土したテラコッタに刻まれたのはメソポタミア文明における「主要三神」の姿です。「鳥大神」、「大地の統治者牛」そして「鳥の神格」が付加された「雨による平衡の女神」つまり「イシュタル」です。「鳥の神格」が付加された「雨による平衡の女神」とは「イシュタル」であることが明確に示された、貴重なテラコッタだと思います。やがてコーカサス地方生まれの神ではない「イシュタル」は「エンキ」に置き換えられます。「イシュタル」の属性から「淡水の深淵」と「死の王国」を支配する「エンキ」がメソポタミアにおいて生まれています。「淡水の深淵」とは彼らの故地「淡水黒海」の神格化(高天ヶ原)だと考えています。「黒海大洪水」の後、コーカサス地方の部族が世界に散らばったのは、彼らの「淡水文明」が重要な意味を持つと思います。「淡水」の文化を再構築できる「大河」、「湖」への移動です。ここでは当然「葦」と「葦舟」の文化も「淡水黒海」で生まれたことを考えなくてはいけないでしょう。「水牛」と「葦」と「鳥」です。

 

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(104)メソポタミア・主要三神が刻まれたテラコッタ壺

  ラルサ出土、ルーブル美術館蔵;ARCHEOメソポタミア

 

そして「エンキ」に置き換えられた「イシュタル」は、コーカサス地方以外の複合的な部族が住む都市「ラガシュ」の都市神となります。

こう考えると、写真(60)のレリーフが作られたのは、都市「ラガシュ」が最も栄えた「エアンナトゥム王」の時代だと考えられます。

これら後世の「鳥の神格」を理解して、バルカン半島・BC5,000年頃の「鳥女神の登場」に戻ります。

 

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(60)Burney Relief・イシュタル;wikipedia(参照)

 

 

 

 

 

 

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