モロッコ(Morocco)のユダヤ共同体
(37)Rabbi Ifergan、spiritual leader in Oufrane, Anti-Atlas、Morocco;1955
jews MOROCCO; MERELL
スカーフ左に「水玉・〇」、右に「水玉・〇、女神・△、平衡(sheveron)・十」そして「火」の「赤」、「雨による平衡の女神」の表象をまとうモロッコの「Rabbi」
クリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」を見ると、女性(参照)が読んでいる「雨の表象」で飾られた本からは「手(雨)」と「渦巻(生命)」が立ち上っていることに気づきます。写真(5)モロッコ(Morocco)の「Wedding Contract(結婚契約書)・20世紀初頭」に描かれている表象と同じ概念であることが分かります。(参照)
モロッコの「ユダヤ共同体」について調べることは、「フリーメイスン」そして「Bertha Zuckerkandl(ベルタツッカーカンドル)」女史など「ユダヤ人」についての情報が必要だと考えます。また「ベートーヴェン・フリーズ」について調べること、すなわち、ベートーヴェンの「歓喜の歌」やフリードリッヒ・フォン・シラーの「歓喜に寄す」に書かれている詩の意味を正確に解釈するには、モロッコの「ユダヤ共同体」について調べることは有効です。
このように考えるのは、これまでに読んだ「ユダヤ教」の本は「旧約聖書」の神話などについて書かれ、ほとんど「ユダヤ人」や「ユダヤ教」についての本質に触れていなかったからです。世紀末ウィーンの「ユダヤ人」や「ユダヤ教」の情報が参考になった西村雅樹氏の「世紀末ウィーンの知の光景」にしても、「ユダヤ人」、「ユダヤ教」、「ユダヤ共同体」の言葉が包括的に使われているように感じられました。
これまで見てきたように、 ユダヤ人をはじめコーカサス地方の部族は、BC5,600年頃から世界に散らばり始めます、バルカン半島から西への大移動もBC3,500年頃にはすでに始まっています。そして定住した(アイルランド、ポルトガル、スペイン、インド、メソポタミア、エジプト、黄河などなど)それぞれの場所で個別の「共同体」が作られていきます。「旧約聖書」が生れたのはBC587年「バビロン捕囚」以後のことで、一つの共同体・旧ユダ王国の出来事です。
つまり「ユダヤ共同体」、「ユダヤ教」といっても、世界それぞれの「ユダヤ共同体」、「ユダヤ教」であり、一律に論じることは出来ないのです。現在投稿されているWikipediaの「ユダヤ教」は「ユダヤ仏教」、「ユダヤ=ヒンドゥー教」(Y染色体「G2b」・参照)などにも触れ、柔軟によく書かれています。一読の価値があります。
さて、ここでの作業ですが、後回しにしていた写真 (5)「Wedding Contract」jの表象を先にすべて見るほうが、「雨による平衡の女神」と「イシュタル」、「歓喜に寄す」に書かれている「智天使」の関係などについてもわかりやすいと考え、始めることにします。
(5)Wedding Contract
jews MOROCCO; MERELL
写真 (5)Wedding Contractの真ん中には「五弁花」の「野ブドウの花」が描かれています。「野ブドウの花」については何度か言及してきました。(参照1)、 ( 参照2)
「豊穣のコーカサス」の表象です。「楽園・豊穣のコーカサス」を描いたと思われる、「カルロ・ルスピによるETORURIA,タイクィニア、トリクリニオの墓・葬祭絵画複製画(BC470年頃)」に「野ブドウ」とともに「月桂樹」、「イチョウ」が描かれていたことにも留意すべきだと思います。
そして左右に二羽の鳥が描かれています。「コーカサス地方」と「鳥」についても何度か言及しています。(参照1)
(38)アルメニア王国(BC190~AD428)の国旗;Wikipedia
八芒星(参照)と二羽の鳥
二羽の鳥はBC5,000年頃からコーカサス地方、北西イラン、アナトリア、シリアでよく見るようになります。一羽はコーカサス地方の大神です。雌雄異株植物(コーカサス地方では、野ブドウ、月桂樹、イチョウなど)の受粉を助ける「鳥妖精」が変容して「豊穣の大神」になったと考えています。(参照)
メソポタミア南部(シュメル)でも初期のころは「鳥」の姿で現れています。やがて「天空紳 アン」となり、宇宙に偏在する神として「鳥」の姿で現れることはなくなります。旧約聖書の「アブラハム」が住んでいたのは、「アン」の「ジッグラド」と「白色神殿」のある「ウルク」ですから、ユダヤ教の神も「宇宙に偏在する姿なき神」となったと思います。
そして、もう一羽の「鳥」こそが「イシュタル」です。
写真 (5)Wedding Contractの右側の「鳥」を見てください。嘴が長く曲がっています。
写真(56)のVulture(ハゲワシ)であることが分かります。コーカサス地方、アナトリアなどで行われていた「鳥葬」を考えるべきでしょう。
(39)Silver Crown of jewish bride;c1920 Fez Morocco
jews MOROCCO; MERELL
(40)Hanukkah Lamp Anti-Atlas,19 century
jews MOROCCO; MERELL
(103・b)ベルト;ウラルトゥ(urarutoxu)の美術と工芸,BC9世紀~BC585,;コーカサス 古代文明展図録
古代オリエント博物館、岡山市立オリエント美術館(参照)
コーカサス地方、北西イラン、アナトリア、シリア、インドなどで「イシュタル」がどのような「女神」であったのかは、写真(56)fresco of Çatalhöyük;チャタル・フュユク第七層・祠堂の壁画を見て、打ち捨てられていた写真(57)チャタル・フュユク遺跡のヴィーナス像を考えれば解ります。
「雨による平衡の女神」であり、出産の女神(この後、ライオンはイシュタルの聖獣となります。)だけでなく冥界の女神でもある「生と死の女神」です。「円筒印章」で分かることですが、メソポタミアで「戦いの女神(のちのニケです。)」にもなります。また、「豊穣の大神」が「天空神」となった後「豊穣の女神」ともなります。メソポタミアではすぐに「豊穣紳・イナンナ」が作られます。「水(雨)」には「エンキ」、「平衡」には「エンリル」がつくられ、イシュタルはコーカサスの神々から外れます。ただ、アナトリア、シリアには「イシュタル」が深く根付いています。
二十世紀のモロッコ・「ユダヤ共同体」に「イシュタル」が現れていることは、BC3,000年以前の大移動からなのか、アナトリアからフェニキア人が伝えたのか検討の必要があります。
(56)fresco of Çatalhöyük;チャタル・フュユク第七層・祠堂
THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas
(56)fresco of Çatalhöyük;チャタル・フュユク第七層(BC5,600年頃)・祠堂
THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas(参照)
(57)チャタル・フュユク遺跡の聖獣ライオンとヴィーナス像(出産の女神、えい児の頭が見える);wikipedia