イシュタルの手(3)
ミャオ族と「イシュタルの手と舟」
(19)ミャオ族姉妹節の民族衣装;なるほどザワールドより
中国南部と台湾(参照)の少数民族が持つ表象については、随分以前から興味を持ってきました。今回、写真(20)の銅鼓船文に刻まれた表象を見て、その他のミャオ族の表象や数々の儀礼と併せ考察すると、ミャオ族の出自、移動の時期が明らかになります。
まずは写真(20)の銅鼓船文に刻まれた表象を、全て整理することから始めたいと思います。またそれは日本の南西列島や太平洋岸、中部,南部のアメリカ大陸に広がる海洋民の文化と、地中海、黒海の海洋民文化の共通点を知ることにもなります。
(20)ミャオ族、銅鼓船文に刻まれたイシュタルの手と舟
図説日本人の原郷,第三章舟を浮かべ鼓をたたき租を祀る・萩原秀三郎
上から見ていきます。
①斜線は「雨」を表し、「雨の女神」jの「舟」です。
②斜線は「雨」、舟の舳先が「手・雨」になっています。以後出てくる舳先が二つに分かれた形は「手・雨」の変容したものであることが解る。そして、後に「目」にも変容する「雨粒」がみえます。すべて、「雨の女神」の表象です。
③これは非常に珍しい二つに分かれた舳先です。「水牛の角」はコーカサス地方で「平衡」を表しています。ここでは「雨による平衡の女神」を表しています。
そして、舟に描かれているのは「渦巻の連続文」です。この文様は、黒海大洪水(BC5,600年頃)の後、海峡でつながった黒海沿岸のルーマニアとウクライナに、BC5,500~BC2,750年に存在した文明「Cucuteni-Trypillian culture」(参照)と、バルカン半島北西の「Butmir culture」(参照)に最初に現れた文様です。両方とも、アフリカから「ズールーの概念」を持ってやってきた多くの部族と、50,000年前にアフリカを出て、「巻貝・渦巻・生命の誕生」の概念を持ちながら、アナトリア、バルカン半島、東ヨーロッパに定住した部族が作り出した文様です。
写真(112)の壺の文様は「雲を呼び、雨を降らす犬・ズールーの概念」と「渦巻・生命の誕生」の連続文が上下に描かれています。
同じ概念「渦巻・生命の誕生・ヴィーナス」の「ヴィーナス」は後に「雨による平衡の女神」と習合して「イシュタル」が生れています。
(112)Cucuteni culture(ルーマニア)・壺の文様 BC5,500年頃
古ヨーロッパの神々 マリア・ギンブタス
④「手・雨」が変容した、二つに割れた舳先。船体には「斜線・雨」、「点線・雨」、「◎・雨粒」、すべて「雨」を表しています。
➄二つに分かれた舳先に、イシュタルの神格である「鳥」(参照)が組み合わされ、「斜線・雨」、「点線・雨」も見られる。さらに「長方形・輝く雨」が二つに分かれた舳先と組み合わされ、スカンジナビア半島の岩絵に見られる「二層のイシュタルの舟」の成立過程を見るようだ。そして、「鳥の目」が「雨粒、雨」の表象になっていることは注目すべきだと考えます。エジプトの「ホルスの目」やメソポタミア神話の「イナンナがエンキから奪った目」と同じ概念が考えられます。
⑥これまで現れた、二つに割れた舳先「手・雨」、「鳥」と「鳥の目・雨粒、雨」、斜線の「雨」、点線の「雨」が独特の変容を始めています。イシュタルの神格を表すこれらの表象は、⑦、⑧で驚くべき事実を証明します。