BC508年クレイステネスの改革(陶片追放)により、アテネでは貴族制、僭主政治から脱却し、アテネ民主制のもと約70年の繁栄の時を迎えます。(ギリシャではなく、ポリスとしてのアテネです。)(8)の砂岩製女神アフロディテの頭部はそのアテネ民主制繁栄の中で作られています。この時期にはアッティカ方言の「ギリシャ神話」がまとまりつつある時期でもあり、聞きなれたギリシャ神話の女神が登場してきます。しかし、「女神の呼名」は政治学的な違いでいかようにも変わるものです。大切な連続性を見るためには、属性と表象を観察するべきです。そして、その一つが黄金伝説展(4)から続く「花紋」です。
(8)砂岩製女神アフロディテの頭部(BC500年~BC450年)
(8)砂岩製女神アフロディテの頭部(BC500年~BC450年)
(9)Wikipedia(展示品ではありません)
花をテーマにしたジュエリーを作り続けていた私は、よく柘榴の蕾を輪切りにして眺めていました。図解すれば(9)Wikipediaのようになるのですが、小さく、締まった鮮やかな色彩と、花の蕾とは思えない造形美は目に焼き付いています。今になって解かったことがあります。「Chevron(Cheveron仏古語)」や「Me'andre(Meander(英)」以外の文様が大地を表す円盤(銅鏡や青銅鏡)の縁を飾るのは「柘榴の花弁(輪切りにされた)」だったようです。「生命の樹」の観念は第三の表象として、世界に広がっていたのです。むしろ「蓮」は「水中の柘榴」として,後から「聖なるシンボル」となったようです。
(10)イヤリング;サルディス、アナトリア西部(BC4世紀)
アナトリア西部のサルディスは、BC334年からのアレクサンドロス大王によるアケメネス朝ペルシャに対する東方遠征まではペルシャの支配下でした。このイヤリングは大王遠征後の作品だと思います。マケドニアはスパルタと同じドーリア人の王国ですが、ヘレニズム諸国の公用語「コイネー」でイオニア・アッティカ方言を使用したように、イオニア・アッティカの文化がアナトリアに流れ込んだ様子が見えます。ギリシャ神話の世界から、生殖のシンボル「エロス」と「コレー」の小像がぶらさがり、センターにはお馴染みの「六弁の柘榴花」が咲き、生殖のシンボル「鳥」も姿を見せています。「大地」を表す円錐にはアーチ形「Chevron(Cheveron仏古語)」と、ここにも「六弁の柘榴花」が見られます。ギリシャ世界の「多産と豊穣の大地」満載のイヤリングになっています。ただ上部円盤の花紋は「六弁二重花」になっておらず、違う要素が入っています。それが明確な姿を見せるのが、問題の(7)金製ロゼッタ紋飾りです。
(7)金製ロゼッタ紋飾り;ダーダネルス海峡、ギリシャ(BC4世紀)
ギリシャとアナトリアの接点にある「ダーダネルス海峡」で見つかった(7)の花紋は面白い形をしています。「八弁二重花」なのです。そして、びっしりの雄しべは柘榴の種子の様です。ここまで来れば、もうお分かりだと思います。八弁は「ナツメヤシの花」、そしてびっしりの雄しべと二重花は「柘榴の花」なのです。二つの「生命に樹」を表象しています。「多産と豊穣・生命の樹の花」の出現です。この花の流れは「ヘレニズム文化圏」に広がり、ガンダーラにおいて、仏像装飾に現れます。
(11)円筒印章;ウルク近辺出土、イラク(BC4,000年代後期)
円筒印章;ドミニク・コロン著・東京美術(推薦本 )
八弁花「生命の樹・ナツメヤシの花」はBC4,000頃、菱形を組み合わせたような花弁です。つまり、「石刃の大地」に一番古いV字形の連続紋「Me'andre(Meander(英)」を刻し、その中に「ナツメヤシの花」を引き出したためです。次に(10)で見られるような、内向きU字形の「Chevron(Cheveron仏古語)」であらわすと涙型の花になり、「七宝つなぎ文様」など連続文様に使用するときは上下対称のマーキス形になります。