形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

「羽子板、扇」が導いたこと(18)酉の市 ;氷川神社

花畑大鷲神社;酉の市

「酉の市」と「氷川神社」のルーツを探りながら、地中海文化圏まで至りました。

折しも「黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝 国立西洋美術館」が始まり、数多くの「形而下に石」が展示されています。そして、一つ一つを精査する中で多くのことを学んでいます。時がたつのは早いもので、結論を出すより早く「一の酉」がやってきました。兎にも角にも、「酉の市」発祥の地に足を運びました。「花畑大鷲神社」です。素晴らしい神社です。境内に身を置くと、子供の頃のような、懐かしい暖かさを感じます。日常生活の延長線上に神社があり、いつものように、淡々と感謝と祈願に来られている「とりのまち」の方々。応永年間(1394年~1428年)より続く営みです。そこには、「観光」的なものの匂いはありません。私も「開運扇」を頂き、何祈ることなく拝殿に手を合わせていました。

 

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(1)参道から望む拝殿

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(2)拝殿両側にはリボン状の飾りが見られます。リボンの上には(6)「昇り龍・下り龍」の彫り物があり、「蛇」を表象しています。

 

 

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(3)社紋;扇に日の丸

青山浅田の五段弁当・取っ手に、「扇と羽子板」の透かし文様を見てから始まった「形而下の石」探しは、再び同じことを表象する「扇」に出会いました。「熊手」と「扇」が同じ観念の表象物であることは、写真(7)・「花畑大鷲神社・酉の市」の「開運扇」が表しています。この「地中海文化圏」から始まった観念の、具体的な説明の時も近づいてきました。

 

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(4)手水舎に現れた「鬼獅子」

 

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(5)手水舎に現れた「鷲」

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(6)拝殿;リボン上の「昇り龍・下り龍」

 

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(7)開運扇;両サイドのリボンは「蛇」を表し、扇は花で満ちている。花畑(花園)

 

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(8)開運扇に見られる「六角に花」;出雲との関係を示す。かっては「出雲からの人々の町」

 

イオニア式 「六角石灯籠」

ここまでは見られるであろうと思っていた、想定内の「形而下の石」でした。ところが、「花畑大鷲神社」でとんでもない物に出会います。「六角石灯籠」です。私は目を疑いました。薄暮の「とりのまち」にイオニア式の「石灯籠」が立っているのです。日本的(仏教的)に抽象化された様式ではなく初めて見る「初期イオニア式」なのです。装飾様式本などで見るイオニア式・「エッグ&ダーツ」は様式化が進みすぎて、この表象のオリジナルをすぐには想像できません。「花畑大鷲神社」の「六角石灯籠」は「初期イオニア式」が生まれつつある過程を見せているのです。一瞬で「イオニア式」成立時の観念を理解しました。

 

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(9)六角i石灯篭;二の鳥居前

 

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(10)六角石灯篭;拝殿前

六弁・柘榴の花に守られた「宝珠」は具象的な「柘榴の実」。「渦巻」は深く、しっかりとしたイオニア式。

 

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(11)六角石灯篭;拝殿前

柘榴の花・先の尖った「花弁とガク片」の二重構造に「種子」が「連珠」の表象として乗る。

 

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(12)六角石灯篭;拝殿前

六花弁それぞれに三個の「種子」がのり、より「連珠」の表象は完成されている。

 

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(13)イオニア式;「エッグ&ダーツ」と「渦巻」

ヨーロッパの文様辞典;視覚デザイン研究所

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 (14)wikipedia

私は「宝珠は柘榴の実だ。」などと、主張するつもりはありません。ただ「花畑大鷲神社」の「六角石灯籠」を、大切な「形而下の石」として積み上げるだけです。折しも開催されている「黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝 国立西洋美術館」で展示されている「逆円錐の大地に柘榴・生命の樹の女神とライオン」、「逆四角垂の大地に六弁柘榴花と鳥」のイヤリングは「花畑大鷲神社」の「六角石灯籠」と同じ表象です。次の「黄金伝説展 (6)」では、「花畑大鷲神社」で見てきた、「蛇」、「獅子」「柘榴」「渦巻」「石刃由来の大地の表象」「扇」「各種Chevron(Cheveron仏古語)やMe'andre(Meander(英)」をすべて併せ持つ展示品を取り上げます。

 

 

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