シレノスの正体と野ブドウ
(22)ETORURIA;横たわるシレノスが表された飾り板(拡大)
(26)野ブドウの花(拡大)
皆さんも「野ブドウ」の画像を検索してみて下さい。三葉形やハート形などのバリエーションっを見ることが出来ます。つまり、黄金伝説展図録で「ツタの葉の冠」と紹介されているのも「野ブドウ」だと思いますよ。野ブドウ属は「カズラ」ですから、「ツタの葉」で間違いではありません。しかし、エトルリアの黄金作品を見る場合は「野ブドウ」として見たいものです。何故なら、これらの作品は「ブドウ」の意味が重要ですし、エトルリアの民族由来を知る上でも重要な「ワード」になるからです。
写真(27・28)カルロ・ルスピによるタイクィニア、トリクリニオの墓・葬祭絵画複製画(BC470年頃)。この墳墓の所在地はは、南エトルリアの火山地帯・凝灰石の地層で岩窟墓地帯でもあるし、古来、エトルリア・ブドウ栽培の中心地でもあります。(22)横たわるシレノスが表された飾り板;ヴィニャネッロ、クーバ墓地、第七号墓、もこの地域です。
竪琴を弾く女性、踊る女性、足元には「野ブドウ」が実っています。頭には「月桂冠」が見られます。二重笛を吹く男性の頭には「野ブドウ」で作った冠が見え、「豊穣の楽園」には鳥がいます。樹は葉の形と実の付き方からして「月桂樹」だと思います。他の場面では「イチョウの木」が見られ、鳥が飛んでいます。
「野ブドウ」、「月桂冠」、「イチョウ」---何か気づきませんか?そうです、すべて「雌雄異株」の植物なのです。受粉には「鳥」が必要なのです。「鳥の精霊」と「豊饒の大地」はこうして結ばれていたのです。また、「鳥の精霊」はエトルリアの民族由来を示します。「鳥の精霊」が「月桂冠」を持っている姿は、そのまま「ニケ」を想起させます。「野ブドウ」で作った冠で二重笛を吹く男性と踊る女性、ディオニュソスの儀式みたいですね。でもこの時代はもっと素朴に「豊穣の祝い事・収穫祭」が近い気がします。
(27)カルロ・ルスピによるETORURIA,タイクィニア、トリクリニオの墓・葬祭絵画複製画(BC470年頃)
エトルリア文明(古代イタリアの支配者たち)ジャン・ポール・ティリエ;創元社
(28)カルロ・ルスピによるETORURIA,タイクィニア、トリクリニオの墓・葬祭絵画複製画(BC470年頃)
エトルリア文明(古代イタリアの支配者たち)ジャン・ポール・ティリエ;創元社