形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝(18)       

ETRURIA(エトルリア)の民族(2)

 

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 (35)ETORURIAパテラ 銀、鍍金;パレストリーナ、コロンベッラ墓地、ベルナルディーニの墓、イタリア(BC7世紀第一四半期

 

「写真(34)蛇の頭部のある銀のレベス」と同じ墓からの展示品です。共通するものなので、同時に見てみましょう。パレストリーナは黄金伝説展(17)で触れた様にラツィオ州のローマに近いラティウムの都市です。なのに、BC8世紀~BC7世紀に限り、展示品のような副葬品が墓地から出土したようです。「写真(35)パテラ」は平面なので、特に良く図案を見ることが出来ます。図案を精査して驚きました。彼らは、かくもハッキリと民族の出自を描いていたのです。図案のすべてを満たす場所と時は明確です。先ずは、図案の一つ一つの意味を見て行きましょう。

 

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(36)写真(35)ETORURIAパテラ(拡大)

 

先ず、全体の構図から「蛇に守られた豊饒の大地」の観念がある事が解ります。そして、外周右端には、山での鹿狩りが描かれています。「うろこ」のような石を積み上げて「山」を表すのは、メソポタミア文明の「円筒印象」などに見られ、この場所はメソポタミア文明の影響が及んだところの様です。「写真(34)蛇の頭部のある銀のレベス」には「ライオン」と「水鳥」も描かれています。また、左の方の山には「ウサギ」もいます。多くの山があり、鹿、ライオン、ウサギ、水鳥がいる場所でもあります。

次の場面は、飛ぶ鳥の下で「馬」に水を与えています。彼等は「騎馬」の民族でもあるようです。

そして次には「ナツメヤシ」と「ブドウ」の樹が現れます。「ナツメヤシ」が生育する場所で、BC8世紀以前に「ブドウ」が栽培されたところです。

そして彼ら、また彼らの一部は「拝火教」(ザラスシュトラ・ゾロアスター教以前、多神教時代)を奉じていたことも確かです。「有翼の円盤」の下には、「拝火台」と「供物台」が置かれ、供物が捧げられています。よって「有翼の円盤」は「大地」を表す「円」に「鳥の精霊」の「翼」が付き、「豊饒の大地」の表象となります。ローマ県パレストリーナにある「フォルツーナの神殿」に祭られた「フォルツゥナ」について「ブリタニカ国際大百科事典・小項目辞典」の解説に、「豊穣の角」を持っていることから、「元来は、大地の実りをもたらす豊饒の女神であったのではないかとみられている。」とあります。私も同じ考えです。大胆な推理になりますが、(36)写真(35)パテラ(拡大)に「巫女」がいます。この「巫女」の「神託」が、パレストリーナでは「sortes praenestinas]と呼ばれ有名になり、「フォルツゥナ」は「運命の女神」と呼ばれるようになったのではないかと思います。元来は、Wikipedia[パレストリーナ」に書かれているように「プラエネステのフォルツゥナはプリミゲニア(最初にもたらすもの)の名により崇拝された。」、「豊饒の大地」の女神であったと思います。ちなみに、「フォルツゥナ」は「有翼の女神」です。こう考えると、「拝火教」(ザラスシュトラ・ゾロアスター教以前、多神教時代)についても、精査する必要がありそうです。

山を越えた次の場面は、「野ブドウ」を右手に、左手に「葡萄酒用の壺」を持って踊っている、エトルリアでの「森の神・Silvano dio delle selve」がいます。つまり、ブドウの原産地域なのでしょう。何度も書きますが、BC8世紀以前に「森の神・Silvano dio delle selve」は存在していたことになります。(ギリシャのブドウ栽培はBC6世紀からと言われています。)

そして、「野ブドウ」の上方には、「戦車」を両手で守る、「有翼の女神」が描かれています。BC8世紀より後に、ギリシャ神話に「勝利の女神・ニケ」として現れる「女神」が生れた土地です。

 次回は残されたア半分を精査しましょう。

 

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(37)ETORURIA戦車を守護する「有翼の女神」

 

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(38)葡萄酒用の壺;埋もれた古代大国の謎・幻の国ウラルトゥを探る(岩波書店)

 

 

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 (34)蛇の頭部のある銀のレベス:BC7世紀第一四半期

パレストリーナ、コロンベッラ、墓地、ベルナルディーニの墓、イタリア

 

 

 

 

 

 

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