形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)Gleichenia japonica(ウラジロ)とズールーの概念(3)

 

 

Roundhouse(Basket house)とMehrgarh(メヘルガル)

 

 

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(15)Zimbabwe(ジンバブエ) Roundhouse(Basket house);Wikipedia

 

 

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(10)Burkina Faso(ブルキナファソ)・円錐形の住居:vivelaventure.fr

 

 アフリカ各地の円錐形に編み上げた植物素材の円形住居を、一般に「Roundhouse」と呼んでいます。形状のみが円形の建築物の総称です。しかし、「タルタリア粘土板(Tartaglia clay plate)」(参照)に記されたズールーの概念「ズールーの人びとは、円環をもっとも神聖な象徴の一つとみなしている。ズールーの家は宇宙の縮図であり、四つの大地の歪みに分かれている。」(マシジ・クネーネ)、「そして積み上げられた円環は生命の成長の象徴となっている。」。この概念の宿つた「アフリカ各地の円錐形に編み上げた円形住居」を単に「Roundhouse」と呼ぶことに少しの抵抗があります。「巻き編み(コイリング)技法」・「輪積み技法」で「円錐形」に編まれた籠と同じように、「家」、「大地」、「宇宙」を相対的に表象しています。一つの考古学的な「形而下の石」は、この形状の造形物が、葬儀に深く結び付いていることに見ることが出来ます。ズールーの概念では、人は「大地」の周期に結び付けられて葬られます。成長していく「円環」の一つに結び付けられるのです。明確にしておくべきは、よく間違えられる「循環の概念」はないことです。「タルタリア粘土板」の「先祖の周期」は「梯子状」の絵文字で表されています。一つ一つの段差はそれぞれの周期を表しています。「トーテムポール」が表象するように、それぞれの周期は積み上がり、生命は成長していきます。「家」もまた、「一つの周期」を表しているのです。いろいろな文化に見られる「或る周期で家が焼かれる」のも、(例えば、ウクライナ、ルーマニアのククテニ文化、福島市の宮畑遺跡)「家の一つの周期」が終わることの表れになります。「式年遷宮」、「式年造替」も同じ概念だと考えます。

土器が発達しなかった、新石器時代のアフリカでは「円錐形に編み上げた籠」を「棺」として用いた例が見つかっています。相対的な「大地」を表象した籠で葬られるのです。一つの周期を表してもいます。そして同じように土器がなかった時代に「棺としての籠」が見つかっている場所が、パキスタンにあります。はるか後世に「インダス文明」が起こる近くで、その場所は「Mehrgarh(メヘルガル)」です。

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(16) Makli necropolis,Thatta Sindh;Maqbara Daya Khan Rahu.JPG

 

 ハラッパ文明の地、イスラム時代の墓地に建つ造形物。ここに眠る人たちの「一つの周期」を表す。「一つの円環」、「一つの家」、「一つの大地」、「一つの周期」が円錐形に積み重なります。世界に残る、「サークル状の連柱」、「四角形状の連柱」にも、積み重なる円錐形の上物が考えられるのです。

 

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(17)Makli necropolis,Thatta Sindh;Maqbara Daya Khan Rahu.JPG

 

蓮柱が四角形に並び立ち、写真(16)と同じ概念に、コーカサス地方の「四角の大地」が融合したことを示しています。奈良五條市東阿田町の「御仮屋」もコーカサス地方の「四角の大地」が融合した「積み重なる円環」を祭っています。植物素材で編み上げた、円錐形の「円環」の積み重なりは、けっして「仮」ではないかと考えます。「御仮屋」と言う考え方は、「積み重なる円環」が表す「大地」に、コーカサス地方の「豊饒の鳥妖精」が「山の神」として降りてくる、ではないでしょうか。「鳥」の存在を象徴するように、「ケイト・鶏頭」の花が紅白にかざられています。ちなみに、「ケイト・鶏頭」の原産地はインドです。

西アジアで両者の融合した姿が、インドを経由して日本で見られるわけです。

 

 

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 「鬼走り」・「鬼まつり」から見えてきたこと(1)参照;(9)奈良五條市東阿田町「御仮屋」;市立五條文化博物館

 

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(18)奈良五條市東阿田町「御仮屋」;市立五條文化博物館

 

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(5)花山車;トピックス(6)日枝神社 山王祭(参照)

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