文様の誕生(6)
平衡の王女の顕現・雨の王女、そして「雨」の概念
The Ancient pueblo People(プエブロの部族達)
Hopi(ホピ族),Navajo(ナバホ族),Anasazi(アナサジ族)etc.
(73)アメリカ・サウスウエスト、プエブロインディアンの彩色土器
アリゾナ州東部中央 ホワイトマウンテン 1,175~1,300年(左上)
アリゾナ州東部中央およびニューメキシコ州境 1,050~1,200年
母なる大地の声;名古屋ボストン美術館図録
小林達雄氏は次のようなことを書かれています。
「なお、草創期終末期の多縄文土器様式に、特別なモチーフが出現する。たとえば、菱形を重ねたモチーフ、あるいはラーメン用の鉢の縁をめぐる雷文の一種ににたモチーフなどがその典型である。こうしたモチーフが編籠によく編み出されている例を、容易に想起いうるであろう。北アメリカ西南部のプエブロ族は、籠作りの長い伝統を維持しながら、八世紀ごろに土器作りが伝えられると、土器に籠の文様をそのまま応用して、三角形やジグザグや階段状のモチーフを土器に描いた。縄文土器発達史第一期(イメージの時代)の文様の成立を考えるうえで、興味ある示唆をあたえてくれるであろう、」
The Ancient pueblo People(プエブロの部族達)とは、アメリカでは、大雑把に「バスケットメーカー」としてかたずけられている、「編む文化」を持ってアリューシャン列島を渡った人びとです。前述の「芝の家」に住むショショーネ族やウィチタ族もアリューシャン列島を渡った仲間になります。小林達雄氏の指摘どうり、「土器の文化」を長い間持つことなく「編む文化」、「松の文化」(プエブロではポンデローサ松・ Pinus ponderosaを食糧その他に利用しています)で生き抜いてきた人びとです。
そこでプエブロの部族達の、観光化される以前の彩色土器に描かれた文様を「編目のKnotsによる見え方」を用いて、編まれる以前の「概念の形」に還元してみました。
(74)プエブロの部族達の文様、編まれる以前の「概念の形」;和久譲治メモ
階段状、鋸刃状の表現は、Knotsによって現れる編目の表現だと考えます。そうしてみると、彼らの表象は「雲」と「雨」がほとんどであることが解ります。日本で縄文以前から縄文土器に引き継がれた「概念」と同じことになります。
(75)プエブロインディアンの彩色土器;ニューメキシコ州、チャコキャニオン、プエブロ・ デル・アロ出土、1,030~1,200年頃:ウィキペディア
この土器は1,200年に近い頃の物だと考えます。「雲」の表現が「編目」ではなく、「雲の具象的な形から表現されています。縄文土器でも「前期」頃になると、こうした先祖返りともいえる、「雲」、「雨」の具象的な形からの表現が現れてきます。「編む文化」の記憶が薄れ、本来描きたかったテーマを具象的な形からイメージした文様になります。しかし、一万年以上編み続けてきたアメリカの「バスケットメーカー」が本来の「概念」を保持し続けていたのでしょうか。このことは外部(南)からの伝播も考慮しなければならないと思います。日本に於いても縄文晩期の亀ヶ岡土器様式に、同じような文様が現れます。このことは両者の伝播経路や時期の確定に役立つはずです。そしてもう一つ、「雲」、「雨」の文様を複雑にしているのは、同じ「概念」の編目によって幾何学的に見えるものと、具象物からイメージしたものが同時に存在していることです。
(76)「雨」、「雲」の文様;和久譲治メモ
(108)幾何学文様土器片・Sesklo文化(ギリシャ)BC6,850~4,4oo年
Greca insolita-pixiland. info
また、Sesklo文化(ギリシャ)BC6,850~4,4oo年の幾何学文様とよく似た文様だと思います。(参照)
(77)プエブロインディアン、Hopi族の岩絵
この岩絵を見た時は驚きました。「神経衰弱ゲーム」でイメージは「サルデーニャ島」にとび、さらに「CAMONICA VALLEY]に結びつき、アフリカの部族、縄族、そしてアメリカインデアンの羽根飾りの意味が、一瞬で理解できました。いずれまとめます。