形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)ズールーの概念と貝の文化(8)

 

                「雨の女神」誕生と  「二枚貝」(4)

   上部(後期)マグダレニアン(Supe'rieur Magdale'nienne)文化の表象

 

 

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(24)「雨」と「雲」で表現された「平衡の概念」、そして「平衡の王女」へ

   Grotte(洞窟) de Bernifal、France;Supe'rieur Magdale'nienne

           Wikipedia

 

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(25)「雨」の中に現れた「平衡(バランス)」」の表象

     Roc(小洞窟)de Marcamps,Gironde,France;Supe'rieur Magdale'nienne

    THE LANGUAGE OF THE GODDESS; Marija Gimbutas

 

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(26)「馬」、「水玉(雨)」と「平衡の表象(二本線、矢印、V,いずれも平衡の表象)

      La Grotte de Niaux,France;Supe'rieur Magdale'nienne

       THE LANGUAGE OF THE GODDESS; Marija Gimbutas

 

 

「雨の女神」誕生と  「二枚貝」(3)の写真「馬と雨」、「馬と雲」は何を願って描いたのでしょうか?

私の仮説では、ヒントは意外なところにあります。人類最初の哲学的概念である「ズールーの概念」の誕生です。「ズールーの概念」はこの出来事から生まれたと考えられます。「Solutre'文化」消滅後の「Supe'rieur Magdale'nienne文化」の表象には人類の概念に大きな飛躍が見られます。

ズールー部族に語り継がれてきた「創世神話」を叙事詩に書き上げたマシジ・クネーネ(Mazisi Kunene)の「アフリカ創世の神話・女性に捧げるズールーの讃歌」を読み解くと良く解ることがあります。「ズールーの概念」とは「人間の死」から始まり、「死すべき人間の存在意味」を考えることから始まっているのです。「死すべき人間の命・円環」を世代として積み上げることが「宇宙」の中での「生命の成長」であり、それは「死すべき人間」にしかなしえないこと。そして、宇宙を創った「神」は決して死なないので、「生命」を成長させることは出来ず、ただ世界の変遷を見ていること。これらのことを思考する「きっかけ」が「叙事詩」に書かれています。つまり、この「きっかけ」によって彼らは「人間の死」の意味を考え始めるのです。また「ズールーの概念」の重要な「神、先祖、男、女の四つの空間」を表す「丸に十字」の表象は南フランスで始まった「雨」に「平衡の概念(平衡の王女になる)」であることも解ります(後に解説)。「Supe'rieur Magdale'nienne文化」の表象と「ズールーの概念」はリンクしているのです。

この「きっかけ」とは「Solutre'文化」消滅です。一部の部族は、北アフリカに後退しました。

写真(19)が示す様に、アフリカから進出してきた民族にとって、[Roche de Solutre'](参照)は馬の狩場として象徴的なサイトであったようです。

 

「アフリカ創世の神話・女性に捧げるズールーの讃歌」より

 

神々が合意して人間を作ったとき、ただ一人反対した邪悪な女神は、人類を滅ぼそうとして攻撃を始めます。

「大宇宙のはるか彼方の平原で、火が燃え上がった。遠くの領域に監視の目を光らせていた者たちは恐ろしい騒音を聞きつけ、それに続いて山々が崩れる音を聞いた。

雲は、宇宙全域に広がってそれをすっぽりと包むかと思われた。

(中略)

そして天の谷間は闇に包まれた。

女神が通ったために、すべての生物は盲目となった。竜巻が次々と起こって彼女の後を追った。死んだ惑星の幽霊のように、地球に埃が舞い上がった。

群れを成してさまよう獣たちの上に、彼女の金切り声だけが響いた。

彼女は地球の中心に陣を構えて、星を引き裂き毒ある雨と蔓延する死を降りまいた。(中略)

平野は地球の血族たちで膨れ、腐敗する死体が蟻塚に小山を作った。

(中略)

夏の芳香はかき消され、枯葉は地の果てまで散らばった。

人々は恐怖に駆られて、この凄まじい季節から逃げ出した。

(中略)

どの氏族もその父母の名前を口にして、避難場所を見つけようとした。

 

父祖(先祖)たちの神聖な領域に、人間の窮状を目撃したという女がやって来た。

女は人間の門が閉じられるのを見たのだ。

女はすでに死の祭に入っていた。

女は父祖(先祖)たちをいましめ、抗議した。

その子供たちを保護するように訴えた。

「行って、天の王女に告げよ。

(中略)

高い山の頂に身を隠して、王女が広大な霧のベールを払うと、その前に、真っ白い霧が広がった。

(中略)

「雲」がその額を垂れて、水の入ったカラパッシュを割り、、光の大波とともにゆらめくと、地球が清められ、「水」が「赤い平原」に降った。

川が黒い石の上に威勢よく白い翼を広げると、腐敗の汚れは、大海の湾曲部に投げ入れられた。

(中略)

地球は黒く、豊かに、そして肥沃になった。」

 

この「創世神話」では、平原を真っ赤に焼き尽くした「炎」と「雲」・「雨」による大地の再生が語られています。南仏の「Supe'rieur Magdale'nienne期」の「洞窟壁画」と考え併せてみましょう。

大地が「雲」・「雨」によって回復し、「馬」の狩りで満たされた「Solutre'文化」期のように、「馬」が再び帰ってくるように願いを込めて、洞窟に「馬」と「雲」・「雨」の壁画を描く彼らの姿が浮かびませんか!

写真(24)~,(26)ではその願いを更に形而上的に発展させ、「大地を真っ赤に焼き尽くした「炎」も「雲」・「雨」により「平衡(バランス)」が保たれる。」ことを表現しています。そして、馬が帰ってくる(写真26)。更には、この「大地の平衡(バランス)」を保つ概念的な表象を創り(写真25)、最後に「平衡の王女」を創り出すことに至ります(写真24)。

 

つづく

 

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何処までもどこまでも…・・・続く桜の道でした。

 

 

 

 

 

    

  

 

  

 

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