「雨の女神」誕生と 「二枚貝」(4)
上部(後期)マグダレニアン(Supe'rieur Magdale'nienne)文化の表象(3)
平衡(バランス)の表象
(29)「二本線」の表象 1.Cueva(洞窟)de la Pileta,Ma'laga(Gibraltar近く),Spain
2.Crotte(洞窟)de la Bernifal,France(南仏)
THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas
これまで見てきた「馬」、「雲」、「雨」の表象に続き、上部(後期)マグダレニアン(Supe'rieur Magdale'nienne)期期に「平衡の表象」は洞窟壁画に現れます。
焼けた大地に「雲」が湧き「雨」が降り、「平衡」が保たれ動物が帰ってくることを願う表象です。直接的な「動物」に「雲」、「雨」の壁画から、「平衡」を「二本線」で表す概念的な表象に発展しています。
(66)平衡の王女;1,2,Karanovo culture,Bulgaria,c.BC5,800.
The Language of GODDESS Marija Gimbutas(参照)
「二本線」の表象は前述の「平衡の王女」の鼻として現れていました。
(30)丸(雨)に「二本線」の土器文様;1.Dimini culture,Thessaly,Greece
2.Cucuteni culture,Sipenitsi,Ukraine
THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas
(31)S字形の「沸き立つ雲文様」に組み込まれた「二本線」、土器文様
Cucuteni culture,Sipenitsi,Ukraine
THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas
「平衡」を表す「二本線」は、丸(雨)の中に置かれ「雨による平衡」の表象になります。BC5,ooo~BC4,000年頃に「Cucuteni culture,Sipenitsi,Ukraine」などの文化圏を中心に広く現れます。
(32)西ウクライナ;BC4,000、Cucuteni culture
古ヨーロッパの神々;Marija Gimbutas
「Cucuteni culture」の中庸になると、円(雨粒)に「二つの雨粒」が入り、さらにその中に「二本の波線」で表された「雲」の表象が二つ入った、複雑な表象も現れたいます。またこの大きな「二つの雨粒」の概念ははテラコッタの「平衡の王女」にも見られます。
後に「円」は「円環」や「大地」などの観念的な表象に変容しますが、「円」、「丸」、「点」などは「雨による平衡」の「雨粒」から始まったと考えます。[
輪になって踊る」の原義は「ズールーの円環」以前に「雨による平衡を祈る」だと思います。「ズールーの概念」は「雨による平衡」から生まれていました。このことは次回(平衡の表象・V)で詳しく書くことになります。
アメリカの先住民・「ナバホ族」(参照)は「ホウジョウ」という言葉を持っています。。彼らの「ホウジョウ」は「自然の調和した良い状態」を意味します。「ホウジョウ」という概念も「雨による平衡」から生まれていました。ただし、「ナバホ族」などの「アナサジ文化の部族達」は、地中海のサルデーニャ島あたりで変容した新しい「雨による平衡」の概念を、南からの伝播で受け取った可能性が高いのです。新しい「雨による平衡」の概念は太平洋を越えています。彼らの住居遺跡や岩絵がそれを教えてくれます。(長くなるので後日説明)
(74)プエブロの部族達の文様、編まれる以前の「概念の形」;和久譲治メモ(参照)
(52)「円環」;編目のKnotsによる見え方;TRIBAL & VILLAGE RUGS Thames & Hudson(参 照)
(85)Me'htelek遺跡発掘レポートメモ,Janos Makkay(参照)
Koros Culture,Hungary
「渦巻く雲」の表象は、「巻貝の概念(参照)」で解ったように「渦巻き」が表す「生命の誕生」の意味が「雲」に加わり「沸き立つ雲」となります。
写真(74)の真ん中の表象は「雲」の表象が「渦巻き」(巻貝の渦巻き概念・生命の誕生・参照)の概念が強く残る東ヨーロッパで「渦巻き」と結び付き、さらに「編目のKnots」により変容しています。このことが示すのは、スペイン、南仏、イタリアや北アフリカなどの地中海地域で、「土器」の発達は東アジアに比較して遅れていたことです。「編目のKnotsにより変容」は、これらの文様が成立した後も。編み籠が日常的に使用されていたことを示しています。土器にこの概念がそのまま表現されると、写真(74)右側の表現になるはずです。日本の縄文土器がその例です。
また縄文土器をはじめとする土器の文様に「雲」、「雨」、「雨による平衡」、「平衡の王女」が現れるのは、「土器」が「水」を入れる器として誕生した結果ではないでしょうか。
新潟県、笹山遺跡;縄文時代中期
縄文の力
(33)ルーマニアの「人面」表象
上の写真はルーマニアで見られるれる「二本線」を鼻に見立て、二つの「雨粒」を「目」に見立てる造形です。写真(32)の「大きな雨粒」と組み合わせた「平衡の王女」が現れます。
(33)西ウクライナ;BC4,000、Cucuteni culture
古ヨーロッパの神々;Marija Gimbutas
このテラコッタには「開いた手」と同じ、「五本のネックレス」、「五本の垂線」が「雲」と「雨」を表しています。
(34)西ウクライナ;BC4,000、Cucuteni culture
古ヨーロッパの神々;Marija Gimbutas
この「豚の鼻」にも似た造形に先立ち、王女の顔を持った「豚」のテラコッタがBC5,000年代のブルガリアやマケドニアで作られています。そして、縄文時代の日本では「イノシシ」になって登場します。
(35)豚のテラコッタ;マケドニア;BC5,000年頃
縄文テラコッタ;イノシシ;青森県,十腰内遺跡
縄文の力
この「豚の鼻の王女像」は日本でも見られます。
(33)勝坂式縄文土器にみられるトンボ眼鏡文のモチーフ(?)
縄文人の世界;小林達雄
勝坂式縄文土器に現れた「トンボ眼鏡文」は,この「豚の鼻」に似た造形の「平衡の王女」であり、「丸(雨)」に「二本線(平衡)」が表す概念「雨による平衡(バランス)」からの変容です。
(34)双頭の動物テラコッタ;Starc'evo culture,Macedonia;BC5,800~5,600.
THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas
縄文双子土器;福島県、三貫地貝塚
不思議な縄文土器;大田区立郷土博物館
同じ「二本線」で表す平衡の概念は、また別の流れに変容します。双頭の動物や、二つの注ぎ口を持つ土器などです。アフリカの創世神話では「双子」は「神」でした。ハプスブルク家の紋章で有名な「双頭の鷲」のルーツも「二本線」にあります。
日本の縄文時代と「雨による平衡の概念」については、後日詳しく書きます。
さらに「二本線」で表された「平衡」は、「二本指」でも表象されるようになります。
(61)豆粒文、ギザギザ・垂下・貼付隆線文、平衡の王女・貼付隆線文土器
ko"ro"s culture,Hungary;BC5,500~BC5,400?(参照)
The Language of GODDESS
これは、写真(29)「二本線」の表象 1.Cueva(洞窟)de la Pileta,Ma'laga(Gibraltar近く),Spainの洞窟壁画の「二本線」が「二本指」を使って描かれていることに関連していると考えます。複数の斜線は「雨」の表象ですが、「「手の指」すべてを使って描かれた為に、「開いた手」そのものが「雨」の表象になったのと同じことだと思います。(後に説明します)
(34)「開いた手(雨)」、「二本指(平衡)」、「雨粒(雨)」、「三本線(水)」が見られる土器装飾、「二本指」に「雨粒」の表象は「2」の概念により二個見られます。真ん中には「平衡の王女」が見られます。(次回説明)
二つの「Y]に「雨」を組み合わせ「雨による平衡」の表象が現れます。やがてそれはSheveron「V」となっていきます。このようにSheveron「V」は「平衡」、「平衡の王女」の表象だったのです。
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