形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)ズールーの概念と貝の文化(25)

 

 

「イシュタル」の表象(3)

新たな発見-雨による平衡の女神のポーズから解ること・バルカン半島(8)

鳥女神の出現 BC5,000年頃

 

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(105)golden water buffalo(黄金の水牛);Varna Necropolis Bilgaria

   ANISTORITON 

 

バルカン半島に於ける「鳥の神格」を持つ部族の登場は、そのインパクトの割には確たる遺跡を残していません。しかし、バルカン半島の状況はBC5,000年頃より変化します。つまり、これまで融合して発展してきた「オーリニャック文化」期の新人(ホモサピエンス・サピエンス)(参照 の「ヴィーナス」文化、「マグダレニアン期」の豊かな「表象文化」、「地中海海洋民」の「二枚貝」文化、そしてサハラ砂漠(北アフリカ)からの「神像や陶器」そして「ズールーの概念・世界観)」の融合が変容します。

BC5,300~5000年頃,ルーマニア西部、「Danube river(ドナウ川)」の支流「Tisza river」、さらに遡った支流である「mures river」流域の「タルタリア(tartaria)」に最初の変化が起こります。写真 (89)の出来事です。(参照)

 

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 (89)タルタリアの粘土板と折られた神像の首;BC5,300~5000年頃

  古ヨーロッパの女神

 

同じ頃「Tisza river」流域の「Koros-Cris culture」で、腕を水平に広げた人形の神像が作られます。この文化の神像は長い間、写真 (78)のように「長方形の石板」に顔と雨の表象が表現されたものでした。

 

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 (78)石製平衡の王女(三本線,ドット、ジグザグ)土器の文化以前

       Me'htelek,Koros Culture,Hungary.: Me'htelek Nandor Kalicz著

 

  続いてBC4,850年頃から「「Danube river(ドナウ川)」の支流「Tisza river」 を下り「Danube river(ドナウ川)」との合流地点近辺に栄えていた、「マグダレニアン期」の「表象文化」を持つ「Starcevo culture」と、サハラ砂漠からの「Butmir culture」に文化的な交流が見られるようになります。また「Butmir culture」の領域内には「Koros-Cris culture」の部族が居住した痕跡が認められます。(参照)

写真(84・b)「Dimini culture」の神像に見るように、「Sesklo culture 」、「Butmir culture」などの影響を受け、バルカン半島の中西部に住む「オーリニャック文化」を受け継ぐ部族は、「渦巻(ヴィーナス)」文様を付けた、人間と同じ姿の神像を作り始めていました。(参照)「Eary Vincaa Period(早期ビンカ期間)」と呼ばれるBC4,800年頃までの期間です。

 

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(84・b)母子像・Dimini culture、BC4,800~4,500年頃;chronos/01

 

BC4,700年頃から、彼らの神像は、足を揃えて一本にし(衣類で足は見えなくなる)、腕を水平に広げ、「+(Cheveron平衡)」の表象を形作り始めます。

 そしてついに頭は「鳥」になります。つまり「Eary Vincaa Culture」は変容します。

同じく4,700年頃、「Karanovo culture」もその文化を変えています。

 

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(95)鳥女神;「Vinca culture」後期

  古ヨーロッパの女神

 

おそらく「Karanovo culture」で地中海海洋民の「二枚貝」と「お釈迦様ポーズ」が融合して生まれたであろう、写真(83)の「雨による平衡の女神」は、このころから変容を始めます。

 

 

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(83)Late Cucuteni culture,w Ukraina ;c 3,800~3,600BC

        The Language of GODDESS

 

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(79)女神ポーズの強制;painted on the wall of Magurata cave (NW.Bulugaria)

          THE LANGUAGE OF THE GODDESS;Marija Gimbutas(参照)

 

二枚貝の女神」の右側煮立つのは、「●(雨)」と「+(Cheveron平衡)」を組み合わせた「雨による平衡の女神」です。只今までと違うのは「鳥」の概念的神格が宿っていることです。この「●(雨)」と「+(Cheveron平衡)」の組合せは「マグダレニアン文化」の北の伝播回廊(ステップ草原地帯)の特徴でもあります。コーカサス地方の部族がバルカン半島に現れた時点では、「●(雨)」と「+(Cheveron平衡)」の組合せによる表象しか持っていなかったことも解ります。バルカン半島に来て、他の部族からの影響で発達させた、彼らの概念が良く現れた神像は写真(96)の姿だと考えています。

 

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(96)鳥女神;モルダヴィア

 

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