「イシュタル」の表象(3)
新たな発見-雨による平衡の女神のポーズから解ること・バルカン半島(10)
鳥女神の出現 BC5,000年頃
(109)ウルの王墓出土の黄金の水牛、BC2,500年頃、イラク国立博物館蔵
ARCHEO
(106)golden water buffalo(黄金の水牛), Varna Necropolis出土、Varna culture(BC4,400~4,100年頃)
The Varna Regional Museum of History in Bulgaria;Radio Liberty
(110) Varna necropolis出土の黄金、Varna culture(BC4,400~4,100年頃)
The VarnaRegional Museum of History in Bulgaria;Radio Liberty
初期段階のメソポタミア文明に於ける主要三神は「鳥」、「水牛」、「イシュタル」であったと考えられます。(参照)
本来コーカサス地方で生まれた神ではない「イシュタル」が新しい「淡水の神・エンキ」と入れ替わった頃、「現生の統治者」である「エンリル」は「秩序と調和(平衡)」の神格を併せ持つことになります。つまり、「イシュタル」の神格(雨による平衡)は「エンキ」と「エンリル」が「雨(水)」、「平衡」を分かち合います。
写真(109)「メソポタミア・ウルの王墓出土の黄金の水牛」は王冠のような表象を持っています。そしてその文様は「Cheveron V(平衡)」である事が解ります。つまり、この「黄金の水牛」は「秩序と調和(平衡)」の神であり、「現生の統治者」である「エンリル」の姿です。
改めて写真(106)、(110)「Varna culture(BC4,400~4,100年頃)の黄金の水牛」を見てみると、すでにその兆候が見られます。バルカン半島に現れる以前から、コーカサス地方の楽園、淡水黒海の水辺に群れていた「水牛」は、「現生の統治者」のシンボルになっていたと思われ、写真(110) には衣装に飾る「黄金製水牛の角」が多数見られます。「Varna culture」の権力者は自らを「黄金の水牛」と同一視していた事が解ります。それまでバルカン半島にこのような表象は見られません。
写真(106)の「水牛」は、体の輪郭に沿って「水玉」が見られます。すでに「現生の統治者」は「雨による平衡の女神」の神格を帯びています。それとも、「水(雨)+牛」であった「水牛」が「牛の中でもより高い神格を持つようになり、権力者は自らのシンボルにしたのでしょうか?
いずれにしても、バルカン半島「Varna culture(BC4,400~4,100年頃)」のgolden water buffalo(黄金の水牛)と「平衡ウルの王墓出土の黄金の水牛」は同じ「現生の統治者」と平衡(雨による平衡)の表象であることは確かです。両地点の概念の流れ(文化)、人の流れはリンクしています。
(60)拡大
(60)Burney Relief・イシュタル;wikipedia
「イシュタル」の表象・冠に見られる「水牛の角」は初期段階のメソポタミア文明に於ける「神格」の高さを表しています。メソポタミア文明の「円筒印章」を調べると、「イシュタル」が主要三神であったことはすぐに解ります。「水牛」の中の「水玉」、「イシュタル」が持つ「水牛の角」、そして「主神の翼」。このように「神格」を高め合っています。
(108〉painted on the wall of Magurata cave (NW.Bulugaria)
「Vinca culture」領域内
写真(109)や (106)と写真(108〉っを見比べて下さい。水牛の角は「雨・〇」を形作っています。写真(106)も「雨・〇」で表象しています。水辺に生息するだけでなく、「雨・〇の表象を持つ牛」という意味の「水牛(Water buffalo)」でないでしょうか?
写真(109)は王冠のような表象・「Cheveron V(平衡)」と「水牛の角・雨・〇」で「雨による平衡」になります。このように考えると、大地に住まい「雨による平衡」の表象を持つ「水牛」は「現生の統治者・権力者」の表象になります。