形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(9)「イシュタル」の表象(3-25)

 

 

 

「蛇」を飼う文化(2)ミノア文明崩壊とミケーネ文明

 

ミノア文明、「諸宮殿崩壊後の時代,(BC1,425~1,170年頃)」に千葉県佐倉市宮内井戸作遺跡に伝播した「蛇を飼う容器」

 

 

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 the north entorance of the MALLIA PALACE,CRETE

 

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 (66)「異形台付土器(相似形の大小2個体が近接して出土する)」、千葉県佐倉市宮内井戸作遺跡、縄文後期末~晩期、不思議な縄文土器大田区郷士博物館

 

写真(66)、千葉県佐倉市宮内井戸作遺跡で見つかった「蛇を飼う容器」である「異形台付土器(相似形の大小2個体が近接して出土する)」は、「✙・平衡」の形態が変容しています。この変容はミケーネ文明がミノア文明を征服した文化的な痕跡を示しています。

バルカン半島ペロポネソス・アルゴリス地方で興ったミケーネ文明(BC1,450~1,150年頃)のテラコッタを見ると、ミノア文明、諸宮殿崩壊後の時代,(BC1,425~1,170年頃)に於けるテラコッタの変容が良く解ります。そして、「蛇を飼う容器」の「✙・平衡」の形態変容も理解できます。

 

 

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(70)ミケーネ文明 鳥の女神テラコッタ、テーベ、コロナキス墓地出土

  ARCHEO エーゲ海文明

 

ミケーネ文明の豊富な金製品、そしてその「渦巻」を中心とした表象、最も重要な「牛の角」、「文様の描かれて鳥の女神」を併せ考えると、「Varna culture」(参照)、「Vinca culture」、「Dimini culture」(参照)を中心とした、バルカン半島北部の諸文化が融合した形が見えてきます。

 例えば、写真(70)の「鳥の女神テラコッタ」は「Varna culture」によって変容した「Vinca culture」の「鳥女神」に「Dimini culture」で特徴的な、肢体に「渦巻の文様」が施されています。もちろんもはや明確な「渦巻の文様」ではありませんが、

 ミケーネ文明の「赤子を抱いた、渦巻文様の鳥女神」などは、「Dimini culture」特有の赤子を抱いた、渦巻文様の人型女神」にそっくりです。つまり、ミケーネ文明は、

コーカサス地方部族の「Varna culture」によって変容した、もっと古くからの「ヴィーナス」(参照)の強い概念を持つ、バルカン半島諸部族の文化です。

 南ロシア草原遊牧騎馬のスラブ部族が バルカン半島にやってくるのは、BC2,200年以後の「Yamna culture」の部族でした。(参照)

 そのとき南下したバルカン半島の諸部族は、その一部が中部山岳地帯に文化を繋いでいたと考えられます。

 

 

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(95)鳥女神;「Vinca culture(BC5,700〜4,500年頃)」後期(参照)

  古ヨーロッパの女神

 

「Vinca culture(BC5,700〜4,500年頃)」の鳥女神は、体は「✙・平衡」、首に「sheveron・V 平衡」、腕と頭に「雨粒」を持った鳥の女神です。「雨による平衡の女神」にコーカサス地方部族の「鳥妖精」が習合しています。

そしてその女神に、さらに「Dimini culture」の「渦巻・生命の誕生」が加わりミケーネ文明の鳥女神が生まれていることが、写真(95)、(84・b)、(74)からよく解ります。

 

 

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(84・b)母子像・Dimini culture、BC4,800~4,500年頃;chronos/01(参照)

 

キリスト教の「聖母子像」の原型です。

 

 

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(74)子供を抱いた鳥女神、ミケーネ文明;アテネ国立考古学博物館

  ARCHEO エーゲ海文明

 

頭の「盃」状の造形は水を入れて「雨の女神」の概念を持たせるものではないでしょうか。日本の円筒埴輪にも同じ「盃」状の造形が見られます。

 

 

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(71)ミケーネ文明 鳥の女神テラコッタ、イタリア・ターランド、スコリオ・デル・トンノ遺跡、BC1,375~1,300年頃: ARCHEO エーゲ海文明

 

こうして「Vinca culture」からミケーネ文明 の間に、「鳥の女神」は「✙・平衡」を「大きく広げた翼」で表すようになります。そのため写真(72)の、「◇・輝く雨」、「雨粒の首飾り」を持つ人型の「雨による平衡の女神」」も「鳥」の概念を持たせるために「バンザイ」をしています。これが日本に伝わったのが「ばんざい型土偶」であると考えます。

「ばんざい型土偶」が日本に現れるのは、縄文中期後半(BC3,500~2,500年頃)ですので、バルカン半島で「鳥の女神」から「ばんざい型人形テラコッタ」が作られたのはBC3,000年頃ではないでしょうか。ミノア文明では諸宮殿崩壊後の時代(BC1,425~1,170年頃)に「ばんざい型人形テラコッタ」が作られますので、日本へはバルカン半島から縄文前期以来のルートで入ったと考えられます。つまり縄文草創期(BC13,000~9,000年頃)に「ビーナス像」は、九州、関西、関東に海ルートで入り、その後の土偶は北海道を含む、長野以北に北ルートで入ってきています。再び海ルートで関東、東海、西日本に土偶が増え始めるのは縄文後期中~後葉(BC2,000~1,年頃)になります。群馬県出土の「ハート形土偶」などに始まります。

なお 「異形台付土器(相似形の大小2個体が近接して出土する)」は縄文後期末から晩期(BC1,400~800年頃)に、海ルートで関東地方に入ってきています。

 以上のことから、写真(66)の「異形台付土器」が千葉県佐倉市、宮内井戸作遺跡に縄文後期に現れていることから、「ばんざい型人形テラコッタ」とは違い、バンザイ型への変容前の「異形台付土器」同様に、ミノア文明での「バンザイ型異形台付土器」への変容が考えられるのです。

写真(66)の「異形台付土器」はミノア文明、「諸宮殿崩壊後の時代,(BC1,425~1,170年頃)」について、考えるヒントも与えてくれます。

 

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(72)テラコッタの女神像(ばんざい型人形土偶)、ミケーネ宮殿「偶像の家」出土

   ARCHEO エーゲ海文明

 

ミノア文明・諸宮殿崩壊後のテラコッタを見れば、BC1,425年頃に起こった「ミノア文明・諸宮殿崩壊」はギリシャ本土に興ったミケーネ文明の部族によってなされたことが解ります。

 

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 (66)「異形台付土器(相似形の大小2個体が近接して出土する)」、千葉県佐倉市宮内井戸作遺跡、縄文後期末~晩期、不思議な縄文土器大田区郷士博物館

 

写真(67)の「蛇(平衡)の女神」と写真(64)の「蛇(平衡)の女神」を比べてみてください。時代が逆戻りしたように、釉をかけ、彩色した技法は単なる素焼きのテラコッタに変わっています。そして両手はバンザイ型に変わります。ミケーネ文明の「鳥の翼を広げたバンザイ型」と少し違うのは、せめてもの抵抗でしょうか。そして写真(67)のような、ミノア文明における「バンザイ型鳥の女神」も現れています。ミケーネ文明の「鳥の概念」が、ミノア文明の文化を変容させているのです。逆にミケーネ文明では、一世紀の間に、写真(71)から写真(72)のように彩色を発展させています。

 ミケーネ文明の部族は、地中海における海洋交易など、ミノア文明に学び、力をつけてきた部族です。とうぜん、ミノア文明の文化の影響を強く受け、引き継いでいます。「文字」などもそうですが、「蛇を飼う文化」、「蛇(平衡)の女神」も日本同様、ギリシャ本土に現れます。

次にギリシャ文明に於ける「蛇を飼う文化」を見ていきましょう。明らかに「蛇(平衡)の女神」が現れます。

蛇の女神「女神アテナ」の登場です。

 

 

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 (67)上げた両手と頭に蛇を持つ女神像、a shrine in Gorty in the Mesara in country     district  Crete, The Post -Palace Period(諸宮殿崩壊後の時代,

  (BC1,425~1,170年頃);Ancient Crete, T&H

 

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(68)頭に鳥を持つ女神像、Gazi near Heraklion in country district  Crete, The Post -Palace  Period(諸宮殿崩壊後の時代,BC1,425~1,170年頃);Ancient Crete, T&H 

 

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(73) 頭に蛇を持つ女神像、Gazi near Heraklion in country district  Crete, The Post -Palace  Period(諸宮殿崩壊後の時代,BC1,425~1,170年頃);Ancient Crete, T&H 

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