形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(9)「イシュタル」の表象(3-27)

 

アスクレピオスの杖とイシュタルの表象

 

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(79)ギリシャ神話に登場する名医アスクレピオス  wikipedia

 

 蛇

アスクレピオスの杖」は医療・医術の象徴として、現在も使われている「イシュタルの表象」です。「Supe'rieur(13,500BP~12,000BP)」・上部マグダレニアン文化(参照)に、焼き尽くされた大地が(参照)「雨」によって蘇るのを見た新人(ホモサピエンスサピエンス)は「火」と「雨」による「平衡(バランス・調和)」(参照)と言う概念を持ち、「平衡の表象」として「V・Cheveron」(参照)を生み出します。

「V・Cheveron」は様々に組み合わされ、「+」や,「V」を連続させた「ギザギザ線」になります。日本の「縄文土器」にも「Cheveron・ギザギザ線」はよく現れています。そして、「Supe'rieur(13,500BP~12,000BP)」・上部マグダレニアン文化期「に生み出された「雨による平衡の女神」も、文化の東への伝播期に、「V・Cheveron」で表されるようになります。(参照)

「Cheveron・ギザギザ線」がコーカサス地方アナトリア地方に伝播したとき、「Cheveron・ギザギザ線」を、同じ「平衡のシンボル」として「蛇」に見立てることが起こります。同時に「蛇」は「平衡の女神イシュタル」を表すシンボルになっています。

やがて、「ぶどう栽培」、「蛇」、「イシュタル」とともに、アナトリア地方からクレタ島に渡った人々は、「ミノア文明」を花開かせていきます。最初に、クレタ島の聖なる山頂に降り立ったイシュタルは、「杖」を手にした姿で描かれています。(参照)

 

 杖

アスクレピオスの杖」は,ミノア文明の印章に表されるイシュタルが手にする「棒」や「バトン(両端に雨粒の球体が付いている)」に由来するのは、文化の流れから明白です。それゆえ、イシュタルが手にする物の歴史を遡ります。

結論から言えば、写真(1)から写真(3)の変化にすべてが見えています。写真(1)で「平衡」を表す「水牛の角」の下に、二人の女神が表されています。右は「平衡の角」に「雨」を頭上に乗せて「バトン」を持っています。「雨による平衡の女神」です。左には、「手(雨)」の花を持つ植物(生命の樹)を光背にした「雨による平衡をヴィーナスとして表した女神」です。多くの動物は「ヴィーナス」が「生命の女神」であることを表しています。

 

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 (47)クレタ島に降臨したイシュタル(写真45参照)(参照2)

   ディオニューソス;カール・ケレーニイ著、岡田素之(訳)、白水社

 

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(1)円筒印象印影、イラン、テペ・ヤヒヤ北方シャハダート出土(BC2,770年頃);円筒印象印影、(参照)

 

写真(3)では写真(1)の二人の「平衡の女神」が習合しています。手にしているのは、「バトンの柄」をした、「生命の水」が流れ出す「生命の樹」です。「生命の樹」の三葉の中心は、「生命の水」を入れる「小さな壺」になっています。後に「アナヒータ」や「観音菩薩」の持つ壺であり、「生命の水」は「二月堂のお水取り」の水です。

 

 

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(3)円筒印象印影、手に「生命・復活の水の容器」と「生命の樹」の表象」を持つイシュタル、ラルサ、イラク、BC1,834~1823年;円筒印章 東京美術

 

一方「バトン」の意味は写真(60)のイシュタルが、より分かりやすく表現しています。写真(45)見てください。「バトン」の意味は「雨による平衡」です。イシュタルは「雨による平衡の女神」に、「豊穣の鳥妖精」、「冥界の女神としてのハゲワシ(鷹など)」、「生命の女神ヴィーナス」などが習合した女神であるため、いずれかの神性が強く表れます。また「ディオニュソス」、「ゼウス」なjどのように、分身変容します。(参照)

これらのことから、イシュタルの変容した神々が持つ「 杖」 は「雨による平衡」と「生命の樹」の意味が表れています。また、背中にしょった「生命の樹」がメソポタミアで「矢(矢筒)」に見なされたり、イシュタルを表す「ライオン頭の鷲」が戦勝や戦いと結びつき、イシュタルは「勝利の女神」の神性も付加されます。それにより「生命の樹」、「勝利の女神」は「矢」でも表されるようになります。(日本の神事の矢)

私の故郷、徳島県美好市では、「百手祭」で畑に向かって神主が「矢」を放ちます。「矢」は「手(雨)の生命の樹」(写真45参照)で、「豊穣(大地の平衡)」を祈願する神事です。「ももて」は写真(1)の「百手」を示していたのです。

アスクレピオスの杖」は「生命(蛇の渦巻がヴィーナスの神性を強く表す。)の平衡(バランス,調和)」を表しています。

アスクレピオスの杖」もミノア文明までのイシュタルやディオニュソスが手にしていた「バトン」や「生命の樹」であったことが分かりました。

ところでこれまでに、「椎・榊などの木に蔦(山守葛という)が全体に巻き付いた杖」を持つ「戸下神楽」(参照) の「山守」はイシュタルで、「ハートの実の付いた杖」と同じバトン状の「鈴」を持つ「春日大神」はディオニソスにあたる(参照)ことを書いてきました。

そして西アジアアナトリアからミノア文明で生まれた「イシュタル」、「ディオニュソス」、「ゼウス(ミノア文明のゼウス)」の変容のテクストが、「戸下神楽」の「山守」、「春日大神」、「天照大神」の変容と同じであることことも書いてきました。

このことは「日本神話」は「戸下神楽」に表されているテクストから作られたかとを意味しています。「戸下神楽」のテクストがいかに貴重なものであるかが解かるのです。

 

このことを裏付ける地名が、日本に残されていることをご存じでしょうか?

奈良県の「御杖村」です。「イシュタルの杖」の変容を理解して、この地を見つめ直してください。面白いことが解かります。(次回は「御杖村」にします。)

また、「春日大神は「鹿」に乗って現れた。」との伝承は、写真(80)を見て頂ければ、理解できるはずです。

 

f:id:blogwakujewelry:20180729170339j:plain蛇の。

(60)拡大

 

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(60)Burney Relief・イシュタル、紀元前1800年 - 紀元前1750年頃の物と推定。イラク南部出土。テラコッタ製。メソポタミア文明wikipedia

 

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(45)「イシュタルの手」の変容;和久ノート

 

 

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(80)ライオンの頭ををした鷲が、鹿の上に載って描かれている銅板;テル・アル・ウバイド出土、BC3,000年頃   ARCHEO メソポタミア

 

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(81)ラガシュのエアンナトゥム王の戦勝記念碑「ハゲタカの碑」、BC2,450年頃;パリ・ルーブル美術館蔵  ARCHEO メソポタミア

 

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