形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

Chalcolithic(金石併用時代)ー1-6

テレク川(Tergi river)

 

Maykop culture 黄金の文化 

金鉱床を求めてコーカサス山脈を西へ

 

テレク川(Tergi river)を遡った部族は、多くの銅鉱山と出会ったことでしょう。テレク川(Tergi river)上流からカスピ海に至るコーカサス山脈には現在も豊かな銅鉱脈があります。しかし彼らが目指す、豊かな金鉱脈には出会えませんでした。そこで彼らは西に向かいます。写真(1)に見るように、コーカサス山脈の西側は豊富な鉱物資源に恵まれていました。彼らはその中でも金鉱脈を探し続けます。そして金鉱脈を見つけ、定住をするようになります。その場所は写真(3)のNalchikから写真(8)Kuban Riverの上流域です。200を超える住居群が標高1,400m~2,400mの高地に発見されています。

写真(3)を見ると、ちょうどその地域までが、現在ではロシアの共和国群であることに分かります。金鉱脈が不自然なロシアの共和国群を形成しているのです。BC3,000年頃に「Maykop culture」を征服したのも北スラブの騎馬民族でしたから、同じような侵略の図式が現在のジョージアウクライナに見られるのです。詳しく見ていきましょう。

 

(1)グルジア(ジョージア)の地質概略図;グルジア(ジョージア)共和国資源開発環境調査(この地域は現在ロシアの自治共和国群です)

 

写真(3)のNalchikから写真(8)Kuban River上流域に200を超える住居群が並んだ理由は、写真(8)を見れば解ります。険しいコーカサス山脈に分け入り金を採掘するには、川を下りながら渓谷に分け入る必要があったのでしょう。NalchikからKuban Riverの間には多くの川が流れ始めています。Nalchikがあるカバルダーバルカル共和国(the Kabardian-Balkarian Republic,Russia)には172の川が流れているようです。住居群が川に対して横の方向に並んだのは、多くの部族が均等なチャンスがあるようにする配慮だと思います。それぞれの住居群も楕円の広場を取り囲むように、同じ様なプランで作られて貧富の差はまだ現われていません。多くの部族がいたことは確かです。その後の動乱の歴史で部族を特定することは出来ません。アディゲ「Adyge」・(海岸近くの山岳民族)と言う言葉で呼ぶ方が良いと考えます。また同じ領域の黒海海岸から北西コーカサス山脈地域を「チェルケシア・Circassia」と呼ぶのは、北西コーカサス語族のチェルケス語(Cherkes)=サーカス語(Circassian)を使う地域の意味です。語族であったり地理的な呼び方で部族名ではありません。

この領域に金鉱脈がある事は確かなようで、情報の少ないロシアの共和国である現在も「Nalchik」の産業として、金銀銅など非鉄金属の冶金業を知ることが出来ます。

しかし、やがて「Balaia・belaya river」をさらに下った部族達がもっと豊かな金鉱脈を見つけることになります。

 

(2)Maykop culture wikipedia

 

「金鉱脈が不自然なロシアの共和国を形成している」場所があります。写真(4)の「アディゲ共和国・Republic of Adygea」です。山岳に沿って面白い形をして、ぐるりと周りを「ロシアのクラスノダル地方・Krasnodar Krai」に取り囲まれています。私は三池炭鉱を想起しました。「青春の門」ですね。外界からロシアの領土で隔てられたこの場所こそ黄金の文化「Mykop culture」の中心地であり、首都は「Mykop」です。「Mykop」に最大の黄金を伴う「クルガン・墳丘を伴う墓もしくは積石塚のマウンドを伴う墳墓」が存在することから「Mykop culture」と呼ばれています。ちなみに「クルガン」は冶金技術を持った部族が、財と権力を蓄えたときに、その首長の為に築かれ始めました。「Leyla-Tepe culture」(参照)に初期の「クルガン」が見つかっています。「クルガン」と言えば「騎馬民族」を想起しますが、銅・青銅文化と同様にトランスコーカサスの文化が伝播したものです。

「Mykop culture」も詳しく見て行かなければいけないでしょう。しかし、「アディゲ共和国・Republic of Adygea」とはよく名付けたものですね. アディゲ「Adyge」は黒海海岸近くの山岳民族の意味で、金鉱脈を求めて、険しいコーカサス山脈に分け入った部族達の総称です。ユダヤ人も. アディゲ「Adyge」の一員です。

 

 

(3)Nalchik wikipedia

 

(4)

(5)

(6)Svaneti wikipedia

 

「Mykop culture」の文化を見る前に、コーカサス山脈の高い峰に隔てられた南側にも金脈がある事を確認しておきましょう。写真(6)「upper Svaneti」(参照1)

や写真(7)「Kodory Valley」などです。歴史的にはロシアが砦を築いたりしてジョージアや現地民族と争い続けてきた地域です。「upper Svaneti」で検索してみてください。ギリシャ神話に登場する「金の羊毛」の国「コルキス」にあたります。冶金技術を持つ部族(金鉱脈から鉱石を切り出す技術)特有の「石を切り、石を曳き、石を積む」技術と文化が継承されている地域です。メソポタミア、エジプトを始めとしてナガ族や石を大木に置き換えた日本まで、そして巨石文化を伝播した民族のルーツに繋がります。そのことは表象の連続性として、この文化史で書き続けてきたことです。

この「Mykop culture」の文化こそがBC3,000年頃に至るまでに、北スラブの騎馬民族(Yamuna culture)の侵略により、世界に散らばった「人類文化の種」です。

どんな技術や概念だったのか、これまでに実証されていることを調べていきましょう。

 

 

(7)Kodory Valley・コドリ渓谷

 

(8)the Kuban River

 

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