形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

Chalcolithic(金石併用時代)ー1-6

 

 

Maykop culture 黄金の文化(2)

 

 

(9)Mycopのクルガンから出土した銀製壺

 The Mycop: Bronze Age Culture of Exotic Caucasus

 

 

(9)Golden ox figurine found in the Maykop kurgan (mid-4th millennium BC), Hermitage Museum; Wikipedia

 

Maycopのクルガンから発見されたこれらの金銀製品を見ただけで、この文明の冶金技術と金属加工技術がどれだけのものか、驚愕します。(1)の銀製壺はMycop Culture後期のものでしょうか。貴金属加工を生業として、長い学習をしてきた私から見て、BC4,000の遺物に驚愕するのです。この文明を築き上げた部族の特徴も、この視点から見れば合理性を持って理解できます。壺口の文様(Cheveron)・参照アゼルバイジャン「Gobustan」や北海道「雨宮洞窟」の岩絵と同じ概念が見られます。BC10,000年頃「雨による平衡の女神」の概念がトランスコーカサスに至っていたことが解ります。そして「黒海大洪水」を経て、この水の女神は「冥界の女神」の神性も加わり、「イシュタル」がこの地で生まれます。

 

Mycop cultureの特徴

(1)車輪の使用

近年最も古い車輪として、木材の丸太に棒を通したものが「Mycop Culture」とそれに先立つ「Layra-Tepe cultur(BC4350~4000年頃)」の遺跡から見つかっています。両文明は

ノアの箱舟」を想起する「Shulaveri-Shomu culture」から、冶金技術を持つ部族が移動して作り上げた銅・青銅器文明と黄金文明です。発明されるには訳があります。木材のコロから車輪を作り上げる必要に迫られた部族です。そうです、とてつもなく重い物を運んだのです。それは採掘された金属鉱物だったと考えるのです。そして北の草原地帯に伝播、メソポタミアに移動した一部の部族は、それを改良していきます。メソポタミアへはビールとストローやトランスコーカサス、「Mycop Culture」で生まれた表象(参照)などから部族の移動が証明されます。

 

(2)テラスの造成(段々畑のルーツ)

「Mycop Culture」の文明期に築かれた「石積のテラス」が、今もなおその原型を保っています。コーカサス山脈の奥深い、険しい土地で生きる為、彼らは鉱石採掘技術の石を切り、石を積む技術を「石積のテラス」作りに応用しています。住居スペースや果樹栽培、穀物栽培に利用したのだと考えます。「段々畑」はこの地から世界に拡がります。マチュピチュ遺跡の「段々畑」はその完成形だと思っています。高地に住む部族は、チベットなどを見ても、共通点が見いだされます。大きな共通項に「石積のテラス」と「女神崇拝」があります。

「Mycop Culture」の時代に「雨による平衡の女神」は黒海大洪水の後「冥界の女神」の神格を付与され、さらに出産の女神「ビーナス」と習合して「イシュタル」になります。「イシュタル」は後に多くの動物を彼女の具現物あるいは表象生物として持つことになります。「雨による平衡の女神」の頃には、「雨粒」の目を持つ「フクロウ」。「冥界の女神」が付与されて「ハゲワシ・ハゲタカ」(この事は「Mycop Culture」の時代に「鳥葬」が行われていたことを意味します。説明は後に石造遺物・ドルメンの時にします。)更に「平衡のSheveron」(参照)から「蛇」、「亀」、「カエル」など。習合した「ビーナス」からはネコ科の「ライオン」や水玉文様を持つ「豹」などです。メソポタミアでは「ハゲワシ・ハゲタカ」の足を持ち、「ライオン」「フクロウ」「蛇」などと一緒に表されています。

なぜ「女神崇拝」に触れたかと言えば、気になることがあるからです。日本の飛鳥時代は、仏教が入る以前は「女神崇拝」の時代です。確かめたくて飛鳥に行きました。

 

(10)飛鳥の石造物

 

飛鳥宮の近くの重要な場所に「亀形石造物」と「酒船石」があります。どちらも「イシュタル(日本での呼び名は不明)」を祀る神事が行なわれていた場所になります。行って見ての発見は、「亀形石造物」の右下に細い「石作りの階段」があり、常に水が流されていたことです。女神の表象「亀」には渡井で水が注がれています。「雨による平衡の女神」ですからこのことは当たり前のことです。しかし、細い「石作りの階段」にも水は注がれているのです。そして「酒船石」も考え合わせると重要なことが分かつてきます。「イシュタル」の生まれた「Mycop Culture」ではすでに「灌漑」が行われえていたかもしれないことです。「亀形石造物」ではテラスに水が流れ落ち、「酒船石」は一つのテラスから次のテラスへ水が導かれています。そしてこれらのことが「亀」と「水」の同じ神事に関係付けられているのです。すなわち「灌漑」が「イシュタル」の表象になっているのです。そういえばメソポタミアに「イシュタル」が現れたとき、メソポタミアで「灌漑農法」が始まりました。

 

 

(3)ビールとストロー

(4)ピラミッド

(5)葦の舟と水牛(大洪水以前)

(6)ドルメン

(7)蛇(平衡の表象・平衡の女神イシュタル)

彼らの移動とともに世界に拡散する文明の種を、一つずつ見ていきましょう。

© 2019 JOJI WAKU Blog. All rights reserved.