形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

特別編 日本のゴルゴン  唐古・鍵遺跡 (3)

速報 北海道大学の研究者グループによって、唐古・鍵遺跡から見つかった骨が「メスのヒナ鶏」であることがわかりました。鳥占い用に飼われていたと考えます。

 

 唐古・鍵遺跡の鶏          

 

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(22)土製鶏頭(弥生時代後期);唐古・鍵考古学ミュージアム
 
 
弥生時代には非常に珍しい土製鶏頭が唐古・鍵遺跡で見つかっています。このことも前章の仮説「唐古・鍵遺跡の弥生人は、北イタリアに環濠集落を築き稲作をしていたTerramare cultureの部族である。」を基本に考えれば、すっきりとした説明が成り立ちます。
コーカサス地方でいつから「占い」が行われていたのかは分っていません。しかしコーカサスの部族達は、行く先々に様々な「占い」を伝えています。その中に「鳥占い」がありました。メソポタミアでの「鳥占い」は、月本昭男氏が著書「古代メソポタミアの神話と儀式」の中で詳しく述べられています。鳥の様々な行動から前兆を読み解く占いです。またエトルリアやそれを引き継いだローマ帝国では「アウグル」と呼ばれる終身制の「鳥ト官」を公職として設けていたほどです。もちろん日本にも伝わっています。
「鳥占い」には色々な鳥を観察するのですが、唐古・鍵遺跡とエトルリアには「鶏」の遺物が見つかっています。鳥の中でも「鶏」を重要視していたと考えられるのです。そしてそれこそが唐古・鍵遺跡と北イタリアを繋いでいます。

 

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(23)ETORURIA(エトルリア)の鶏頭

石包丁にchevron は豊穣の表象です、唐古鍵遺跡の石包丁は大きさ、素材、形とも、一見の価値ある優れたコレクションです。

 

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 (24)Impasto vase ;エトルリアのアルファベットが彫られている。(BC7C.)

THE ETRUSCANS;Thames & Hudson

 

(2)壺絵;唐古・鍵考古学ミュージアム

 

(3)北イタリア、Camonica Valleyの岩絵;CAMONICAVALLEY Emmanuel Anati KNOPP

 

これらの写真を出したことでお気づきの方も多いと思います。北イタリア、Camonica Valleyの岩絵に描かれたゴルゴンの変遷に答えはあります。

コーカサスから降臨する女神イシュタルは杖(バトンもあります)を持っています。(参照) 写真(25)のゴルゴンが杖を持っているのは、イシュタルの神性をそのまま引き継がれいることを表しています。「杖を運ぶもの」すなわち「すべてを知るもの」・「知の女神」です。また唐古・鍵考古学ミュージアムの写真(2)と同じように盾と槍や剣を持つゴルゴンは「戦いの女神・勝利の女神」になっています。なぜなら、Camonica Valleyの岩絵に彫られたように、北イタリアでのインドヨーロッパ語族との長く激しい戦いの中で付加された神性だと思います。

「知の女神」であり「戦いの女神・勝利の女神」、といえばギリシャの「蛇の女神・アテナ女神」ですね。このころに広く伝播したことも分ります。ギリシャへの部族の移動も考えるべきでしょう。 

そしてまた唐古・鍵考古学ミュージアムの壺絵のゴルゴンもこの時期の表象だと思います。

 

 

(25)Camonica Valleyの岩絵;CAMONICAVALLEY Emmanuel Anati KNOPP

 

Terramare cultureの末期にかけて、インドヨーロッパ語族との戦いは激しくなり、不利な情勢の中「戦うゴルゴン」からより激しく戦う「戦う男神・軍神」が分岐(変化ではなく分岐です。エトルリアではゴルゴンと軍神が見られます。)します。その変化は先ず「男根」の表現に現れています。写真(26)はこれまでのゴルゴンに「男根」が付いています。頭はゴルゴンのように後光か角のままです。

 

 

(26)Camonica Valleyの岩絵;CAMONICAVALLEY Emmanuel Anati KNOPP

 

やがて数少なく見つかる最後の変化が現れます。モヒカン型の羽付きのヘッドギアーです。このゴルゴンから分岐した「軍神」のヘッドギアーは「鶏のトサカ」にそっくりです。戦の鳥占いに「鶏」が使われても不思議ではありません。唐古鍵遺跡の壺絵には「男根を持つ軍神」が描かれています。

唐古・鍵遺跡とエトルリアの「鶏」は同じ概念の元作られたと思います。

 

 

(27)Camonica Valleyの岩絵;CAMONICAVALLEY Emmanuel Anati KNOPP

 

 

 (28)Camonica Valleyの岩絵;CAMONICAVALLEY Emmanuel Anati KNOPP

 

そしてこの軍神はエトルリアに引き継がれて「Mars of Todi」になります。ローマ帝国では「軍神Mars・マルス」です。

 

 (29)Mars of Todi Etoruria Wikipedia commons

 

奈良五条

 

和歌山とな奈良を繋ぐ奈良五条の神が宿る「御仮屋」の鳥居前には「鶏頭」の花が飾られていました。インド原産の「鶏頭」は私にも懐かしい花です。弥生人のDNAが濃く、弥生時代に人口の増えた(参照)徳島県三好市に生まれた私の村では、子どもの頃家々の庭先に「鶏頭」の花が咲いていました。

 

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 (30)奈良五條市東阿田町「御仮屋」;市立五條文化博物館

   後ろに「念仏寺・鬼走り」の鬼面が見えます。

 

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 (31)「御仮屋」鳥居の両脇に飾られた紅白の鶏頭花

 

追加

東京大学大学院 理科系研究科理学部のレポートでも、弥生時代の人の流入は近畿、四国で多いことが分かります。弥生人の上陸地点を示しています。

 

日経サイエンスの記事(渡来人、四国に多かった?ゲノムが明かす日本人ルーツ)でも、この地区に渡来人のDNAが多いことが報じられています。

 

徳島県三好市西祖谷 神代踊り(link)

 

ずっと不思議でした、神代踊りの神の面はなぜ黒いのだろうか? 子どもの頃、お正月に回ってきていた三番叟の神も黒いお面でした。

サルデーニャ島の神「マムトネス」見た時びっくりしました。まったく一緒の面なのです。徳島県弥生人の渡来が多かったことで説明がつきました。サルデーニャ島からはコーカサス由来の部族だけでなく、現地にいた部族も一緒に逃げてきていたようです。ちなみに昔の面はもっと「マムトネス」にそっくりでした。

それから「花笠」ですが、奈良五條市の「御仮屋」にそっくりですね。神の依り代なのでしょう。円墳にも似ています。

 

徳島県三好市ホームページ

 

(link)

http://blog.livedoor.jp/sarutahikomen/archives/79588591.html



 

 

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