神話は文章ゆえ作られます。表象は時として原義を留めます。
(54)「蝦夷島奇観」熊祭部「祭壇の図」村上島之允 別冊太陽
熊を仕留めたら祭壇を築き感謝の祈りを神(カムイ)に捧げます。
(55)「アイヌ風俗絵巻」フクロウ祭 西川北洋 明治初期 市立函館図書館蔵 別冊太陽
神(カムイ)とは? この祭りの表象は神輿です。フクロウはまるまる目玉二つで「雨による平衡」、そして担ぎ棒は十字で「sheveron・平衡」。雨による平衡の女神に平衡(自然のバランス・平衡が取れて豊穣、お産の平衡は子孫繫栄、世の中の平衡は天下泰平)を祈願しながら女神を讃えます。
(56)「熊送り図」平山屛山 明治初期 市立函館図書館蔵 別冊太陽
この「熊送り図」の表象はポールにリボンです。ヨーロッパ各地でキリスト教誕生以前から行われている「メイポール(五月祭)」と同じです。女神の拠りどころとして立てます。リボンは縄と同じく「蛇」であり「sheveron・平衡」を表します。ヨーロッパでは「雨」の表象として「花輪」がつけられることが多いです。ここでは二つのマルに結んで「雨による平衡」を表しています。私はずっと以前に「字統・白川静著」を読んで以来「マルに結んだリボン」の女神の表象を、自社の刻印として使ってきました。今は「petite-collier」の刻印としても使っています。
アイヌの神とは、ヨーロッパの「雨による平衡の女神」と同じです。黒海大洪水以前の「雨による平衡の女神」は専ら「豊穣」の女神でした。狩猟が中心だった部族には、動物に憑依して獲物を運んでくれる女神への感謝は、広く行渡って共通のものだったようです。
その概念が弥生時代の日本に現れたのです。岩絵に描かれた「鹿」は「壺絵」に描かれています。骨壺に「鹿」が描かれたのは狩猟部族の存在が考えられるのです。唐古・鍵遺跡、清水風遺跡の「鹿」は部族構成を考えさせ、後の豪族たちを思わせます。
「Camonica Valleyの岩絵」と「唐古・鍵遺跡、清水風遺跡の壺絵」の概念と表象はあまりにも似ています。