形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

特別編 日本のゴルゴン (8)イシュタルの舟(14)

 

 

BC3,000年頃の彩文土器絵とイシュタルの舟

タッセルの誕生

 

 

(105)和久ノート

 

エジプト文化・ナカダⅡ期(BC3,500~BC3,300)に、コーカサスの概念の表象で出来上がったイシュタルの舟が描かれた彩文土器が多く作られました。ところがヌビアのサソリ王が上エジプトを征服し、ナルメル王が上下エジプトを統一したナカダⅢ期(BC3,300~BC3,000年頃)には、墓制も変化して彩文土器は作られなくなります。しかし、歴史年表の様に単純に変化しないのが庶民の歴史です。「水中考古学と7つの海の物語」には興味深い壺絵が2点紹介されています。埋葬習慣だけを守り、土器絵のイシュタルの舟の表象は、コーカサスの概念をベースにしてズールーの概念でまとめています。この人物はコーカサス部族の血を曳きながら、ヌビアの王に仕えたのでしょうか。想像が膨らみます。

表象を見ておきましょう。

写真(80)の船室は、四角にx・ピラミッドの表象で「輝く雨による平衡の女神」を2つ重ねて、さらに2つ並べます「2x2」の重なりにまとめています。大きな「平衡」の表象も、二本線のVが2組で「2x2」です。「平衡の概念」を強く表現するため、多重に構成するのもズールーの概念の特徴です。立てかけられた3本は、北アフリカから大西洋岸を北上した部族の「カナック列石(参照)」遺跡の3本線で「平衡」を表していると思います。短い3本線は世界的に「水・雨」の表象ですが、斜めに立てかけて長さを表現しています。「カナック列石」と同じ3本線と考えられます。(参照)

そして写真(106)を見てください。コーカサスで始まった「Sheveronのギザギザ線」は「平衡」や「蛇・平衡」、「イシュタル・蛇・平衡」などを表象しますが、四角の中に、この様にまとめられたのは、初めて見ます。この構成は「カナック列石」の「雨粒」のまとめ方に共通します。ズールーの概念でまとめたコーカサスの表象だと考えます。

このまとめ方をイシュタルの舟に取り付けるために、まとめて縛ったのが、写真(80)に見られる「タッセル」だと考えます。つまりコーカサスの概念ではなく、ズールーの概念で「平衡・安念」を表しているのだと思います。後に「タッセル」の縛り目が「球状」に発達していきますが、最初は「平衡」を束ねた表象だったと思います。「球状」に発達してからは「七夕飾り」や「てるてる坊主」に繋がり、ただのコーカサスの概念の「雨による平衡・豊穣」だけでなく、「天の王女」の概念が残り、「宇宙」や大地を包み込む概念が空の物語を生んだり、反対に雨が降らないことを願ったりするのだと思います。

いまでもエジプトからメソポタミアに至る地域では、「タッセル」の「平衡・安念」の概念が「お守り・護符」として引き継がれています。

もちろん写真(80)、植物の様な「平衡の表象」、「槍のよう櫂」・「雨」の表象もズールーの表象です。

 

 

(106)エジプト BC3,000年頃の彩文土器絵・イシュタルの舟 ;水中考古学と7つの海の物語

 

 

(80)ナイル川の舟 土器絵 年代不詳;水中考古学と7つの海の物語

 

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